先ほど、私が「学生は企業のことがよくわかっていないし、学生にそれをきちんと教えてくれる本もない」という思いを、強く抱いているというお話をしました。
たとえば、先日、私も少々かかわりのある「就活本」が出版され、私にも1冊送られてきたのですが、ざっと目を通したところ、またしても失望させられました。
企業は「演技」を見ているわけではない
この本には、「自己PRをうまく言えなかったとき、もう一度はじめからやり直してもいいですか?」という学生からの質問が載っているのですが、この質問に対してこの本には、 「しっかり話せず、終えてしまうのはもったいない。謝ってでも、もう一度、はじめからやり直せ」という驚きの回答が、堂々と展開されているのです。
まるで、面接とはフィギュアスケートの演技のように、面接官がその技巧や表現に点数をつけているのだとでも言いたげな物言いです。そんな認識だから、最高の演技ができなかったらやり直しが効くかどうか、などという話を書いてしまうのです。
正直、開いた口がふさがりませんでした。企業は演技を評価しているのではありません。間違えるのも、言葉に詰まるのもまったく気にしていない。ただ、話の中身を聞いているのです。そして、その中身から考えて、この学生は将来、自社で活躍してくれるかどうかを吟味しているのです。だから、少し物足りなくても、「イイとこあるな」と思ったら、助け舟も出すし、深く聞きたいとも思う。重要なのは話の中身なのです
先ほどの本の回答では、何よりも、「やり直す」という言葉に違和感を覚えました。美辞麗句を暗記してきて、それを順番に話すというのでは、多くの企業は魅力を感じるわけなどありません。丸暗記、棒読みの、「演技」そのものですからね。
「もう一度やり直して最高の演技を」なんてもう、まさにバカヤローそのものです。就活本や指導事例などに接すると、こんなため息が漏れてしまうことばかりなのです。
今、紹介した例は、就活生を指導する立場にある人間たちの頓珍漢さが混乱を招いているケースですが、一方で、学生が企業というものがどういうものか、あまりにも知らなすぎることにも、頭を悩まされることが少なくありません。
どんなケースがあるか、説明しましょう。
先日、ある学生から、「日本の会社に入ると、やりたくもない宴会芸をやらされると聞いたのですが、本当ですか? いかにも日本の会社ぽくて、嫌なんですけど……」という相談を受けました。
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