資産形成を扱うようになった「家庭科」の新しい姿 調理実習や裁縫というイメージはもはや過去

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だが、家庭科の授業だけで対応するにはいささか時間が足りない。高校では「家庭基礎」(年間週2コマ)あるいは「家庭総合」(同週4コマ、ただし3コマでも可)のいずれかを履修する。多くの高校はこのうち、「家庭基礎」を選択。わずか週2コマの授業にもかかわらず資産形成が加わったとなれば、教育現場の負担が膨らんだのは想像に難くない。

都立国際高校の岩澤教諭はこれまでも金融教育に対して積極的に取り組んできた。金融や財政の仕組みを教える公民(新年度から「公共」)の教諭と連携した授業などの新たな試みにも挑戦。リスク商品のメリットやデメリットについてもすでに授業で触れてきたという。

授業では株価見通しについても触れる

都立国際高校の岩澤未奈・家庭科主任教諭。リスクのある金融商品についても授業で扱うという(写真:筆者撮影)

「投資にもさまざまなやり方があり、必ず儲かるとはかぎらない」「リスクをおそれて何にも投資せず、自分の資産を貯金するよりも、将来や社会貢献など(を見据えて)長期的に運用していくことも大事」「信用できる情報源から判断し、おカネとうまく向き合うことが消費生活には必要不可欠になる」……。同教諭の授業を受けた生徒の投資などに関する意見だ。

同教諭は「もう一歩進んで、株価は半年前に比べれば上昇しているから長期的に考えたほうがいい。あるいは一度に多くのおカネを注ぎ込まないほうがいいなどとシミュレーションしながらイメージできるように学習できればと考えている」と新年度からの授業に意欲を見せる。

もっとも、都立国際高校の取り組みは他校に比べると、かなり先行していると言っていい。別の都立高校の家庭科教諭は「たとえば、預金と貯金の違いを説明してもかえって生徒を混乱させるだけ」と現状を説明。「生徒の経済能力を勘案すると、健全な金銭感覚の育成や契約能力の向上がまずは大事」と指導の領域を資産形成まで広げることには慎重だ。証券業界などが開催する家庭科教諭を対象にした金融教育セミナーにも参加していない。

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