800人の限界集落が「デジタル村民」集め目指す世界 NFTを村民の証しに、村のガバナンスにも参加

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山古志地域の事例を先駆けとして、ふるさと納税をDAO化し、日本各地から集まったお金の使い道をDAOのメンバー全員で決めるなどの事例も、今後、続々と出てくるでしょう。

あるいはスマートフォンのアプリに現金をチャージするとポイントがつく、といったデジタル地域通貨を取り入れているところでは、ポイントをガバナンストークンのような立ち位置にすることもできます。今のところ、厳密な意味でweb3的ではありませんが、将来的にはweb3として地域行政の決定に住民が直に関われる仕組みになるかもしれません。

こういう試みが、まず市町村でうまくいき、そこから都道府県、さらには国へと広がっていくというのは、決して大それた想像ではありません。

一部の人たちの流行を超えて国民の多くがweb3に参入したら、確実に世の中は変わる。まだ仕組み的につたないところはありますが、あらゆるところでガバナンスの民主化が加速していく可能性は十分あると思います。

衆愚政治に陥らないために

ただしガバナンスの民主化が進むと、別の問題が現れる可能性もあります。ガバナンスが透明化することで、コミュニティーの意思決定が衆愚的になってしまうかもしれないのです。

情報がすべて見えていても、その情報の意味するところがわからなければ、投票の際に本当にふさわしい判断はできません。表面的なところばかり見る人や、周囲の意見に左右される人も出てくるでしょう。何でもかんでも人気投票にしてしまったら、ポピュリズム(大衆迎合型政治)になるかもしれない。

問題は、透明性の確保と衆愚政治の予防のバランスです。たとえば、知識を持っていて信頼できるメンバーに投票権を委ねるというのは1つの解決策です。他者に判断を委ねることにはなりますが、少なくとも直接、思いを伝えられますから、既存の代議制よりは透明性が保たれます。

ほかには、専門家が集まる「サブDAO」をDAO内につくり、重要事項の意思決定はそこで行われるようにするなど、すでにさまざまな議論が進められています。

web3で、以前よりもかなり透明なガバナンスが可能になる。しかし透明化するだけでは十分ではなく、理想主義が空回りする恐れがあります。前項では代議制に批判的なことを述べてきましたが、そもそも代議制は、直接民主制よりも手間をかけることで熟慮がなされるとされてきました。ある程度は代議制的な仕組みを取り入れた折衷案とすることで、web3的なガバナンスに実現可能性が出てくるでしょう。

また、ガバナンストークンによる「投票権の強さ」にも、いろいろな決め方があるでしょう。たとえば出資額に応じて付与されたガバナンストークンをそのまま「投票権の強さ」にしたら、「お金を多く出した人の意見が通りやすい」ということになってしまい、フェアではありません。

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