丸紅、「減損1200億円」を招いた2つの誤算 資源価格下落の影響などで今期純益は半減

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丸紅は2013年3月期に純利益が2000億円を突破。2013年4月に、朝田照男現会長から社長のバトンを受け継いだ国分社長は、ガビロンを柱に2016年3月期に純利益2500億~3000億円への飛躍を目指していた。ただ、1000億円を超える巨額ののれん代に対して、買収当初から「高額な買収だったのではないか」という声が絶えなかった。

26日の会見で、過去の投資判断の甘さを指摘された国分社長は、「今後大きなのれんがかかる案件は、従来以上に精緻に見ていく必要がある」と説明。一方、今回の減損でガビロンの残存簿価は1000億円から500億円にまで減少し、「(これ以上のれんを)追加で落とすことはない」と断言した。

来期も厳しい状況続く

買収のれんの減損は一過性の損失に過ぎないが、資源市況下落の影響は今期のみにとどまらない。原油安の総合商社への影響は、通常数カ月から半年程度のタイムラグが出るなど、来期以降の業績への影響も必至だ。丸紅が今回、資源関連に加えガビロンの減損を一括して掃き出したのは、今期中に悪材料を全て膿出ししたいという考えがあるからだろう。「今後もしばらくは資源市況の低迷等を含めて厳しい経営環境が継続する。現在認識できる減損はすべて払拭することで、来期以降は身軽になる」(国分社長)としている。

となると、気になるのは来期の純利益水準だが、これについて国分社長は「意識しているのは2000億円」と答えた。今期の一過性の減損がなくなり前年度比では改善するものの、減損を見込んでいなかった今期の当初計画の2200億円と比べると減益に転じる、という厳しい見方だ。

昨年9月末に住友商事がシェールオイル開発事業を中心に2400億円の巨額減損を出したのは記憶に新しい。第3四半期の決算発表を間近に控える三井物産や三菱商事なども2014年度中に原油相場急落による大幅な減損を認識するのか。資源による成長神話が崩れる中、総合商社各社は一段と非資源分野での収益力強化が求められる。

秦 卓弥 東洋経済 記者

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はた たくや / Takuya Hata

流通、石油、総合商社などの産業担当記者を経て、2016年から『週刊東洋経済』編集部。「ザ・商社 次の一手」、「中国VS.日本 50番勝負」などの大型特集を手掛ける。19年から『会社四季報 プロ500』副編集長。21年4月から再び『週刊東洋経済』編集部。アジア、マーケット、エネルギーに関心。

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