新興国との成長格差が新たな危機の火種に--ラグラム・ラジャン・シカゴ大学教授《デフレ完全解明・インタビュー第9回(全12回)》

--今後5~10年先を見据えた場合、グローバル経済の最も重要なトレンドは何でしょうか。

新興国と先進国の間の成長率格差は、機会とともに、緊張を生み出すだろう。一国の中でも所得や地理的な格差があれば、政策面で異なる考え方が生まれる。後進の人々はより再分配政策を求め、先進の人々は成長政策に重きを置く。今の欧州がそうだ。一部、米国でも見られる。

たとえばユーロ圏では、今後数年にわたって金融・財政政策をめぐる対立が深まるだろう。米国では今後2~3年、経済が比較的低成長となれば、やはり緊張をもたらすだろう。成長性の高い新興国へ投資する米国企業が増えるにつれ、議会ではそれらの企業を国賊として非難する動きも出るだろう。米国が今後数年にわたって消費大国であり続けるならば、国産品の代わりに中国やベトナムからの安い輸入品が増えることに懸念が高まるに違いない。

同時に、国家間の経済力のシフトに伴い、台頭する国家の主張が強まり、政治的な緊張を生むだろう。もし、これらの国々が、市場の閉鎖性によって自国の発展が阻害されていると感じた場合、政治的な結末はどうなるのか。すでにアジアではそうした事例が見られる。レアアース(希土類)の問題がそうだ。

──中国やインドはこれからも急成長が続くと見ていますか。

直線的な成長予測はほとんど外れるものだ。今後10年を考えると、経済よりも政治に依存する部分が大きいだろう。中国は外需に頼って、今と同じペースで永久に成長することはできない。しかし、内需主導への移行は制御が極めて難しい。実際、中国では巨額の景気刺激策が打たれ、銀行貸し出しを伸ばした。一部の資金は国内の高速鉄道網に使われたが、沿海部に人口が集中した中国において、効率的な投資といえるだろうか。

中国の中流層が拡大するにつれ、彼らの政治力がどこまで強まるのか。共産党の民主化・開放は進むのか。いつ他の政党を認めるようになるのか。これらが実現すれば、世界での中国の立場が強まる。中国の隣国との関係は芳しいものではなかった。米国との関係も起伏が激しい。米中という新旧両大国は、相互依存という現実的指向を持つ反面、明らかに不和の火種を抱えている。過ちは深刻な影響をもたらしかねない。

──インドはどうですか。

もしインドが秩序を持ってインフラ開発を進めることができたら、年率10~11%の成長を遂げるのは間違いない。インドの課題は第一にインフラ、第二に教育だ。現状、この二つがネックとなっている。

 主要先進国で唯一、デフレに陥っている日本。もう10年以上、抜け出せないままだ。物価が下がるだけでなく、経済全体が縮み志向となり、賃金・雇用も低迷が続く。どうしたらこの「迷宮」からはい出し、不景気風を吹っ飛ばせるのか。「大逆転」の処方箋を探る。 お求めはこちら(Amazon)

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