新興国との成長格差が新たな危機の火種に--ラグラム・ラジャン・シカゴ大学教授《デフレ完全解明・インタビュー第9回(全12回)》

──今回のバブル崩壊が過去と比べて激しいのはなぜでしょうか。

ITバブルのときは、金利を大幅に下げ、住宅・自動車業界などの金利敏感セクターを元気づけることで危機を脱出した。同時に資産価値を膨らませたことで、人々は値上がり分を使って借金をし、消費した。今回の危機前には米国家計部門の貯蓄率はマイナス水準まで低下していた。

結果的に、住宅は過剰となった。そのため、自動車販売ともども回復ピッチは鈍い。金利敏感セクターが打ちのめされたのだ。一方で、家計は過剰な債務の返済をしている。貯蓄率は5%まで回復したが、ひところの10%からは依然程遠い。

つまり今回の危機の教訓は、過去に刺激しすぎると、今新たに刺激しても効果は大きく落ちるということだ。危機に直面して、米国政府はあらゆる手を尽くした。ということは、財政を健全化しないかぎり、今後新たに財政を出動しても景気を刺激する力は弱まるだろう。

──米国経済が通常のペースで拡大するのはいつでしょうか。

米国経済は今後2~3年は実質2・5~3%程度の成長は見込めるが、通常の循環的な回復とはいえない。たとえば、住宅業界は従来、GDPの成長に大きく寄与し、雇用を生み出してきたが、住宅バブルで建設しすぎた結果、危機前以上に住宅需要が高まらないかぎり、通常の回復サイクルには戻れない。金融業界も危機前より成長力は落ちるだろう。

--米国にはバブルに依存する体質があり、今も国債バブルを作りつつあるとの見方もあります。

まったく否定はできないが、米国がかなり強力な生産性の向上を果たしてきたことも事実だ。米国は革新的な経済であり、移民を通じて労働力の若返りも進んでいる。バブルがなくても、米国は成長できる。

一方で、財政・金融政策に対する過信があり、それを過度に使いすぎた。最近のブッシュ減税をめぐる共和党と民主党の妥協も、基本は支出増と減税であり、変わっていない。財政保守派でなくても、財政赤字の方向性には懸念を覚える。米国は、短期的な手段を通じて目先の痛みに対応することにばかり焦点を合わせてきた。長期的な視点がおろそかになっている。財政刺激策に資金を使いすぎるのではなく、国内のスキルギャップ(技能の格差)を是正することこそが必要なのだ。

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