新興国との成長格差が新たな危機の火種に--ラグラム・ラジャン・シカゴ大学教授《デフレ完全解明・インタビュー第9回(全12回)》

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--米国など先進国が日本の「失われた10年」を繰り返すのではとの見方もあります。

日本はさまざまな要因が重なった「パーフェクトストーム(巨大な嵐)」を経験した。一つには、外需主導から内需主導への転換の過程で、適切かつ持続的な内需を作り出せず、代わりに大きなバブルを発生させ、破裂させた。その問題の解決においても、人口動態上の問題だけでなく、国内経済における強固な既得権益が道を険しくした。そのため、日本は製造業の輸出では今も世界の強者だが、内需セクターでははるかに大きな非効率性を抱えたままだ。

──日本が立ち直るためには、何が必要でしょうか。

私は日本の専門家ではないが、日本のサービス業には大きな非効率性があり、農業の保護主義や、政治家と建設業の癒着などの問題がある。運輸業や小売業も含め、より開放され、競争を促進する必要がある。生産者を競争から守っている規制を減らしていかねばならない。

以前、ニューヨーク・タイムズ紙が、低価格業者を規制しようとする日本の理容業組合のカルテル的実態を紹介していたが、そうしたことが新規参入のコストを増加させる。競争が増えれば、サービス価格は低下する。そうすれば、日本の消費者の利用が増え、内需は伸びを増す。

--あなたは実体経済の構造改革を重視していますが、エコノミストの多くはマクロの刺激策に重きを置いています。

国家が持続的に“高い”レベルのデフレに直面しているのであれば、積極的なマクロ政策も必要だろう。しかし、日本は持続的に“低い”レベルのデフレを経験してきた。

消費性向や資本コストへの多少の影響はさておき、日本は環境に順応する術を学んできた。終身雇用から一時雇用へのシフトや、より柔軟な賃金への転換は、かなり大きな変化だった。生産性が大きく向上し、賃金が安定しそうだと人々が実感できるようになれば、日本の消費者はもっと購入を増やすようになるだろう。別の言い方をすれば、今のデフレは純粋な貨幣的現象ではないということだ。(構造改革を行った)ドイツでは今、失業率が約20年ぶりの低水準となり、賃金の先行きに対する家計の楽観論が高まったことで消費に元気が出始めている。

 主要先進国で唯一、デフレに陥っている日本。もう10年以上、抜け出せないままだ。物価が下がるだけでなく、経済全体が縮み志向となり、賃金・雇用も低迷が続く。どうしたらこの「迷宮」からはい出し、不景気風を吹っ飛ばせるのか。「大逆転」の処方箋を探る。 お求めはこちら(Amazon)

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