会話がしらける?「話し好き」が陥る残念な悪習慣 寡黙は地味じゃない、聞き上手こそ話し上手

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途中で余計な口を挟まれるより、相手が静かに聞いてくれたほうが、話し手にとって話しやすいのは、言うまでもありません。聞き手側も、沈黙を貫くことで、「あの話もしたい、この話もしたい」「何か言わなきゃ」といった気持ちから解放され、相手の話に集中することができ、理解度が高まります。

また、人と話しているとき、必要以上に口を開かない人は、他人に安心感を与えますし、そのような人が発するちょっとした一言は、それが実はさほど大した内容ではなくても、なにか「熟慮の末の一言」といった説得力を感じさせます。

逆に、よく話す人は「頭の回転が速い人」「知識が多い人」「面白い人」という印象を与えますが、それはあくまでも、本当に頭の回転が速く、知識が多く、話術が巧みな場合に限ります。

そうでない場合は、単に相手の話の腰を折るだけ、物事を深く考えていないことを露呈するだけ、相手に話す隙を与えず、あまり面白くない話を延々と聞かせるだけ……になってしまうことも、しばしばあります。

世の中には、自分自身もしゃべりつつ、相手の話を引き出し、膨らませるのがうまい人もいますが、そういう人は話し上手であると同時に聞き上手です。

頭の回転が速く、「相手の話を瞬時に理解し、深掘りできる点や新たな情報を追加して、面白くわかりやすく提示する」といったフローを脳内で一瞬で行うことができる、特殊技能の持ち主だといえるかもしれません。

大切なことは、ゲイバーが教えてくれた

かくいう私は昔、沈黙の価値があまりわかっていませんでした。

もともと、人の話を聞くのも好きなほうではありましたが、子どもの頃は、親からたびたび注意されるくらいおしゃべりでしたし、どちらかというと、頭の回転が速く、弁舌さわやかで目立つ人を「優秀な人」、寡黙な人を「地味な人」ととらえていました。

加えて、20代前半までは、会議でも打合せでも日常会話でも、「何かしら発言しておかないと、自分がここにいる意味がなくなる」という思いにかられ、わざわざ言わなくてもいいことを言って会議の時間を無駄に延ばしてしまったり、非常に浅い発言をし、自分の愚かさをさらけだしてしまったりしたこともしばしばありました。

そんな私が、沈黙の大切さに気づく1つのきっかけになったのは、20代半ばから、週末だけ、新宿2丁目のゲイバーでアルバイトをするようになったことでした。

ちなみに、当時働いていた会社は副業禁止だったはずですが、ある日、なぜか突然「ゲイバーでアルバイトをしよう」と思い立った私は、行きつけのお店に「働かせてほしい」と頼み込んだのです(それから25年経ち、今も私はその店で月に一度バイトをしています)。

それまで、客として飲みに行ったことは何度もありましたが、バーカウンターの内と外では、見える景色が違いました。

カウンターの内側にいるときに求められるのは、お客さんが聞きたい話をするか、お客さんの話を聞くかのどちらか(もしくは両方)であり、「お客さんが聞きたい話ができているか」「お客さんの話をちゃんと聞くことができているか」は、お客さんの態度にすぐに表れます。

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