アメリカが「日韓関係改善」を強く迫れない背景 バイデン大統領のアジア訪問で進展はあるか

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韓国の政権が保守派の尹錫悦(ユン・ソンニョル)大統領に移ったことで、関係の悪化に歯止めをかける機会は生まれている。尹大統領は日本との関係を優先させると公言しており、最初のうちは積極的な交流があった。より重要なことは、尹大統領が、バイデン政権が形成した世界と地域の枠組みに沿って、韓国を再配置しようと動いていることだ。

チャンスはあるとアメリカの高官らは考えているが、アメリカを含むすべての関係諸国がそれを生かすために十分な行動をとるかという疑問は残る。

サプライチェーンの回復力から北朝鮮の脅威まで、ほかの領域では多くの利益を共有しているにもかかわらず、韓国における戦争の歴史と日本の植民地支配の負の遺産という問題は、依然として難しい障壁となっている。日韓両政府は膠着状態にある。両者とも、事態を打開するための次の一手は相手が取るべき、と考えているのだ。

日韓関係の悪化はアメリカにもマイナス

日本と韓国が正常な関係を回復できないことは、インド太平洋においてアメリカがいる場で価値主導の意図を主張しようとするアメリカの努力を損なうものだ。

同盟国の2カ国が協力できないことで、「日米豪印戦略対話」をより広範な同盟に昇格させることであれ、日本の「自由で開かれたインド太平洋」の構想であれ、この戦略が損なわれてしまう。それによって、中国やロシアにアメリカとその同盟諸国の関係を悪化させるチャンスを与えかねない。

ロシアがウクライナに侵攻したことで、アメリカとヨーロッパが世界中の、特にアジアの同盟諸国を共通の大義に結集しようとしている中、こうした課題の緊急性が一層高まっている。もし、これが民主主義と権威主義の間の闘いであるならば、この日韓の目に見える隔たりは明らかな問題だ。

日韓関係の悪化が始まったのはトランプ政権時代のことだが、その当時はこの問題が関心を集めることはほとんどなかった。バイデン政権が登場し、各同盟関係を復活させ強化していくとの方針が打ち出されたことで状況が一変し、この問題が再び関心を集めることとなった。

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