シェール開発、早すぎたバブルの終焉  環境破壊、原油下落…米国生産現地ルポ

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実際に、クオモ知事のフラッキング禁止の決断は、同州健康局の調査や報告に基づいたものだ。同州環境保護局は健康局の勧告を受け、今後、拘束力のあるフラッキング禁止勧告を出す見込みだ。

一方で、ノースダコタ、ペンシルベニア、テキサスなどの州では、フラッキングが天然ガス・石油のブームを引き起こし、「シェール革命」とまで言われた。

州経済を潤し、リーマン・ショックの後、10%にも達した全米の失業率を横目に、1桁の失業率を誇った。その結果、世界の原油価格も劇的に下落し、家計を助けた。

しかし、「シェールバブルの終焉」(前出のニコルソン)には、原油価格のさらなる下落が大きく影響した。ニューヨークで取引される原油のWTI先物価格は08年に一時、1バレルで147ドルの最高値をつけたが、昨年からじわじわと下落し、1月22日現在は約47ドルと3分の1だ。シェール企業が、予想産出量をこれ以上の価格でヘッジしていれば大赤字となる。

シェール倒産の第一号

このため、シェール企業の株価は、原油価格が下降し始めてから軒並み大幅下落した。減産や設備投資の見送りも始まっている。ノースダコタ州バッケン・シェールの生産大手コンチネンタル・リソーシーズなどは、15年の設備投資計画を撤回した。

年明けには、南部テキサス州の小さな石油企業WBHエナジーが、連邦破産法
11条(日本の民事再生法に相当)の適用申請をして経営破綻し、米メディアは「シェール倒産の第1号」の可能性が高いと報じた。マーケットは今後もシェール倒産が相次ぐのではないかと懸念してい
る。
 ニューヨーク州の決定、そして、イサカなどの住民や科学者からの情報発信も含め、米国のエネルギー問題に対する意識は、少しずつだが確実に変化し始めている。

10年ほど前は、「大きくて、ガソリンをたくさん食う車ほどいい車だ」といったエネルギーの過剰消費を当たり前としていた米国人だが、現在は、低燃費車を購入するのが当たり前。ハイブリッドカーがニューヨークのタクシーに多く採用されている。

この10年の間に、明らかに「脱化石燃料」の流れが生まれてきた。

「キーストーンにNO!」

1月13日夜、ニューヨーク・マンハッタンなど全米各地で、カナダからの石油パイプライン「キーストーンXL」敷設に反対するデモが開催された。ニューヨークでは、零下10度近い中、100人以上がプラカードを用意して集まった。

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