三井物産、"32人抜き新社長"誕生の理由 資源価格下落で逆風下での船出
自身の強みを聞かれると、「ロシアや中近東の国営石油会社と缶詰で徹夜の交渉を行い、30代の頃からプロジェクトマネージャーとして交渉団を仕切ってきた。チームを率いて1対1の白兵戦で交渉できる修羅場経験がある」と、100人近くの報道陣が詰め掛けた記者会見の場でも、動じることなく語った。
飯島社長は安永氏を「組合の団交では時には顔を赤くして激論するなど、相手のことを慮るけれども、言うべきことは言う。あたたかい心の持ち主で決断力がある。社内外での人望が厚い」と評する。
一方、社長人事が発表されたことで、業界の注目はすでに、例年2月に発表される社長交代後の新役員人事に移っている。54歳という若さで先輩取締役や執行役員をごぼう抜きしたこともあり、「現在の役員をどう配するかで、力関係が分かる」(ライバルの総合商社幹部)。
飯島現社長は「私も社長に就任したときはボードメンバーで下から2番目。それでも先輩役員のみなさんにはサポートしていただいた。安永新社長の思い描く三井物産像の実現に向かって邁進してほしい」と、全権を委ねることを明言したが、果たしてすぐに経営のグリップを握ることができるかどうか。
事業環境は決して安泰ではない。低迷する石炭や鉄鉱石の市況に加え、足元では原油相場や銅価格の急落が始まっている。純利益に占める資源事業の比率が約8割と、総合商社で突出する三井物産にとって、その影響は小さくない。安永氏が新社長に就任する2015年度が逆風下での船出となるのも事実だ。飯島社長は、「今が三井物産にとって危機な状況といった判断で決めたわけではない」と改めて否定するが、大胆なトップ人事は危機感の裏返しともいえるかもしれない。
(撮影:尾形文繁)
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