伊藤忠商事、「1.2兆円大勝負」の内幕

中国政府との知られざる攻防

三菱商事、三井物産追い上げに意欲を見せた岡藤正広・伊藤忠商事社長(写真:ロイター/アフロ)

タイの華人系財閥であるチャロン・ポカパン(CP)グループとの資本提携から半年。伊藤忠商事はCPと組んで中国の国有コングロマリットである中国中信(CITIC)に1兆2040億円を投じることを決めた。伊藤忠の負担額は6020億円。同社にとっては自己資本の4分の1に当たる額だ。

香港に上場するCITICは、中国政府が100%出資する中信集団の中核子会社だ。伊藤忠とCPグループが折半出資する企業が今年4月と10月の二段階にわけてCITIC株の23.4%を取得する。伊藤忠は所要資金を銀行借り入れで調達するため、昨年9月末で1.0倍だった同社のネットD/Eレシオ(資産負債倍率)は1.3倍前後になる見通しだ。1月20日に記者会見した伊藤忠の岡藤正広社長は「伊藤忠の総資産は三菱商事の半分、三井物産の3分の2でしかない。上位2社に追いつくには優良資産の積み上げが必要だ」と語った。

中国政府との交渉は難航

CITIC株を本当に優良資産にできるかどうかは、これからの伊藤忠、CPとの協業の進展にかかっている。CITICは傘下に中国首位の信託会社や証券会社、同7位の銀行などを抱え、金融を中心に事業を拡大してきた。現在は不動産や資源開発なども手掛けるが、利益の8割を金融に依存している。今後は金融以外の事業を育てて、金融依存率を5割程度まで下げたいというのがCITIC経営陣の考えだ。アグリビジネスでは世界有数の存在であるCPにグローバルな販売網・調達網を持つ総合商社の伊藤忠が加勢すれば、CITICにとっては多角化や海外展開のチャンスが大きく広がる。

ただ、CITICのような大規模な国有企業について、中国政府が20%を超える比率の株を単一企業、しかも外資に渡すことは異例だ。一般の国有企業は国有企業監督管理委員会が所管しているが、CITICは財政部(財務省に相当)が所管している。その財政部は、CPと伊藤忠の提案に対して、中信集団(イコール政府)の保有比率を7割以上に保つことを主張した。

もともとCITICの株式の21%の株式は、政府以外の株主が握っており、財政部の言い分をのめば伊藤忠・CP連合が取得できる株式は10%以下だ。これでは両社の合弁はCITICに持ち分法を適用できず、もちろん伊藤忠の連結決算にも反映されない。

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