人が最期に遺すべきは「財」「事業」「人」だけなのか 良い影響を遺すために必要なのは「生きざま」

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後世に何か遺したいという思いは、人間の根源的な欲求(写真:shiromon/PIXTA)

人類は、子孫を残すことで今日まで生命を保ち、繫栄してきました。後世に何かを残したいという思いは、人間の本能であり、根源的な欲求だと言われます。とりわけ高齢になって人生が残り少なくなると、この世に何を遺して死を迎えるかを真剣に考えるようになります。

唐代の詩人・白楽天の43代に当たる白彦基が、「財を遺すは下、事業を遺すは中、人を遺すは上なり。されど、財なさずんば事業保ち難く、事業なくんば人育ち難し」と語りました。ビジネスライフが残り短くなった50代以上の人にとって、深く刺さる言葉です。

ただ、人が遺すべきものは、「財」「事業」「人」の3つだけなのでしょうか。また、何かを遺そうと思って簡単にできるものでしょうか。最近、私にとって身近な3人の先輩コンサルタントの活動・行動を見て、「この世に何を遺すべきか?」というテーマについて考えさせられました。3人の事例を紹介しましょう。

第3の人生で街づくりに挑戦

一人目に紹介するのは、味香興郎(あじかおきお)さんです。6月に90歳になる味香さん(愛称おきやん)は、現在、「第3の人生に挑戦」として、杉並区阿佐谷北3丁目にいつでも誰でもふらっと来られる「まちサロンおきやんち」を建て、少子高齢化社会の新しい地域のつながりづくりを進めています。

味香さんの「第1の人生」は、日本板硝子での会社員生活です。関係会社7社の社長を歴任し、65歳で定年退職しました。「第2の人生」は、その後に始めたコンサルタント業です。企業勤務の経験を活かして、これまで数千社に及ぶ中小企業にアドバイスをしてきました。

その味香さんが「第3の人生」に挑戦しようとしたのは、阿佐ヶ谷の現状を憂いてのことです。味香さんが生まれ育った三重県と違って、現在住んでいる阿佐ヶ谷は新しい人口が流入し、土地は細切れにされ、アパートやマンションが増え、新旧の住民の交流がほとんどない状態となっています。高齢者の一人住まいも増えています。

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