人が最期に遺すべきは「財」「事業」「人」だけなのか 良い影響を遺すために必要なのは「生きざま」

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NPOの代表も務めた味香さんは、各地の「みんなの家」などを見学して歩きました。その中で文京区本駒込の「こまじいのうち」の老若男女が集まる温かい取り組みに感銘を受け、阿佐ヶ谷にも人が集まる場を作ろうと決意しました。今まで倉庫として使用していた自宅の家屋を改装し、「まちサロンおきやんち」に建て替えることにしました。

現在、味香さんは、90歳の誕生日である6月6日のオープンを目指して、クラウドファンディングによる資金調達、自治体・地域との連携、オープニング・セレモニーやオープン後のイベントの企画などに奔走中です。

「人生の終わりが見えてきた今、住民の力、地域の力を結集して、東京の住宅街、愛するわが町、阿佐ヶ谷に、老若何女が集える場所が実現することを強く願っています。住民が、東京にもこんな地域があるんだと胸を張って言える街の例、を作りたい」

味香さんは、後世に「つながり」を遺そうとしています。「財」「事業」「人」以外にも遺すものはいろいろあるのだと気づかされました。

最後は仕事をやり切って

二人目は、新倉勇(にいくらいさむ)さんです。

私が5月9、10日に研修講師業務である教育機関に行ったところ、別の研修で講師を担当する新倉さんに講師控室でお目にかかりました。私が「おはようございます」と挨拶しても、新倉さんはかすかにうなずくだけ。言葉を発するのも辛そう。それどころか、目を開けているのも、息をするのも辛そう。以前のような生気がまったくありません。

心配になって研修事務局の担当者に訊ねたところ、「新倉さんは、がんなんです」ということでした。昨年暮れにがんが見つかり、4月までは病状が安定していたようですが、ゴールデンウイークに入ってから急に悪化しました。

当然、研修事務局は、新倉さんに治療に専念するように勧めました。しかし、新倉さんの「(長くお世話になったこの場所で)最後は仕事をやり切りたい」という強い希望で、登壇となったそうです。

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