アメリカの半導体大手のテキサス・インスツルメンツ(TI)が、中国・上海の研究開発拠点で実施したエンジニアの配置転換が、業界関係者の関心を呼んでいる。5月6日、同社の元社員が「TIがMCU(マイクロ・コントローラー・ユニット)の開発チームを突如解散し、業務をインドに移管した」とインターネット上で暴露したことで明らかになった。
MCU開発チームのエンジニアは全員、役職や賃金・福利厚生は不変という条件の下で、ほかの製品開発を担当する中国国内の部署への異動を告げられた。同意しない場合は自己都合退社を求められ、(会社都合で解雇された場合に支払われる)経済補償金は受け取れない。
財新記者の事実確認に対してTIは5月8日、「人員カットは一切実施していない。中国は世界で最も重要なマーケットであり、わが社は中国への投資を続ける」と回答した。
中国の競合企業への転職相次ぐ
TIは人員カットを否定したが、すでに数年前から中国業務の一定程度の見直しに着手していた模様だ。前出の元社員の暴露情報によれば、上海研究開発センターのMCU開発チームは2011年に設立され、最盛期の人数は60人を超えていた。しかし2018年以降はチームの勢いに陰りが差し、競争相手の中国企業に転職するメンバーが相次いでいたという。
「今回の配置転換は、上海市で(新型コロナウイルスを封じ込めるための)ロックダウンが実施されているなかで突然、オンライン会議で通知された。会社側は対象者に事前の相談も面接もせず、異動先を一方的に指定した。彼らに自己都合退社してもらいたいのが本音なのだろう」。元社員は、配置転換の背景についてそんな見方を示した。
だが、財新記者の取材に応じた複数の業界関係者は、TIが配置転換に踏み切ったより深い理由は、同社のMCUの競争力低下にあると指摘する。
MCUは最先端の設計技術が求められる半導体ではなく、(後発の)中国メーカーが市場シェアを拡大している。TIが現在も優位を保っているのは、自動車向けや工業設備の制御ユニット向けなどに限られているのが実態だからだ。
(財新記者:張而弛)
※原文の配信は5月8日
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