キングダムに学ぶ「権力闘争」現代にも通じる本質 64冊一気に読破した小島武仁・東大教授が解説
嬴政は今でいう「世界政府」のようなものを考えていたともとれる。一旦、外部を忘れて考えると、『キングダム』に描かれている時代の中国では「中華=世界」のような感覚が強かったのではないか。少なくとも統一前のこの時代、中華の外は遠い世界だったのではないかと思います。
中華という世界に複数の国家があって、悲惨な戦争をし続けている。そうした不安定で過酷な状況の中、統一政府を建てるべきだと考えるに至るのは、壮大な発想であると同時に自然なことにも思えてくる。
秦はすぐ倒れてしまうけれど、その後の漢は秦の時代に作られた仕組みを多く受け継いだ。その後も、中国には統一王朝が現れる。嬴政による中華統一は、現代の大国である中国にもつながるパラダイムシフトでした。
考えさせられた難民問題
現実の問題と結びつけてもう1つ、考えさせられたのが難民問題です。
46巻から始まる話ですが、秦が趙の首都・邯鄲(かんたん)の手前にある鄴(ぎょう)という都市を攻める場面があります。兵糧攻めで陥落を狙うのですが、鄴は強い都市です。
そこで秦の全軍を指揮する将軍は、事前に鄴の周りのいくつかの街を民間人の人的被害を抑えつつ攻め落とし、逃げ出した人々が大都市である鄴に向かうように仕向けます。人を抱えさせることで鄴を弱くしようとした。
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