10歳から仕事して進学「パックン」語る日本の入試 新聞配達と学業を両立させハーバード大に合格
──ハーランさんが受験したとき、ハーバード大の入試ではどのような審査があったのですか?
高校の成績はよかったので特別な勉強はせず、授業で学んだことを生かしてテストに臨みました。願書のエッセーは作家サマセット・モームの『人間の絆』についてと、「初めて海に行ったときのこと」をテーマに書きました。
スポーツのほかに、演劇部、模擬国連など10ぐらいの部活やクラブを掛け持ちしていました。板飛び込み部やスペイン語部では部長に選ばれリーダー役に就いていました。
ボランティアもやっていました。いちばん長くやっていたのはホームレスの人に炊き出しをするスープキッチン。今は乾物などを配るフードバンクが多いのかもしれませんが、当時はスパゲティなど温かいものを出していて、列の整理や配膳、片づけなどをやっていました。
いろいろな大学に落ちながら、ハーバード大に補欠で入りました。おそらく成績、部活、ボランティアなどの総合点で合格できたでしょう。コロラド州の、そんなに裕福ではないところの出身であることも考慮されていたと思います。恵まれた家庭ではあったんですよ。7歳のときに両親が離婚して母親しかいなかったとはいえ、愛されて生きてきた。
でも家計は貧しく、食事は1食89セント(100円弱)。そのため10歳ごろから新聞配達の仕事をしていました。毎朝3時間配達をして、学校で勉強して、課外活動に取り組んでいました。この努力は高く評価されたと思います。
日本の大学が変わらないのはやる気の問題
こうしたことは試験の点数では伝わらない。日本は高校時代の受賞歴を見ることはありますが、育った環境を見ることはないですね。
アメリカの学校の教室では、黒人よりも白人のほうが先生から指されやすいといわれています。白人のほうが勉強ができると思われているのです。
「お金持ちの白人は3塁で生まれて、ホームに入っただけでホームランを打ったと感じている」と言われることもあります。白人の貧困層だと2塁、女性の貧困層だと1塁、有色人種の貧困層だとホームからのスタートです。同じホームにたどり着いたとしても走った距離がまったく違います。多様な学生を入学させている大学は、長い距離を走ってきた学生を高く評価しているわけです。
──日本の大学の男女比率はどうして変わらないのでしょう?
やる気の問題だと思います。東大は「2020年までに学生の女性比率を30%に引き上げる」と言いました。でも達成できなかった。「そもそも東大は男性の大学というイメージがあるから女性が願書を出さない」とも言われます。そうだったとしても、東大の卒業生たちを各都道府県の高校に行かせて、女性を説得すればいいじゃないですか。「東大はあなたを求めているんです」と。
入試にも面接と小論文を導入すればいい。でも変えていない。韓国のソウル大の学生は4割以上が女性ですが、2000年代に日本でいう総合型選抜の枠を増やすまでは2割程度でした。香港大、シンガポール国立大も約5割が女性です。女性が大学に少ないのはアジアの問題ではないんですよ。やる気の問題だけだと思います。
(白石圭)
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