これをめぐって「戦車不要だ」「軍事をわかっていない」という批判が渦巻いている。だが、誤読だし、そもそも資料全体を読んで理解できていないように思える。財務省が述べているポイントを外しているのだ。財務省は、あくまで最近のロシアのウクライナ侵攻などで、明らかになった旧態依然の装備体系を見直すべきではないかと指摘しているだけだからだ。
陸上自衛隊(陸自)の装備体系、運用思想は硬直的であり、軍事的な整合性よりも組織防衛と、組織内政治が優先されている。戦車や機動戦闘車の調達はその典型例といえよう。
アメリカ・イギリス・ドイツ・フランスなど諸外国では第3世代の戦車を近代化して使用しているのに、日本の陸自はわざわざ大同小異の10式戦車を1000億円かけて開発し、1両あたり15億円かけて調達している。
10式の性能で既存の90式で実現できないのは車体重量の軽減ぐらいだ。
装甲戦闘車は更新も近代化もされていない
そして戦車は新調しても、装甲戦闘車は更新も近代化もされていない。同様に87式自走高射機関砲、96式自走120ミリ迫撃砲など1990年前後に採用された装甲車両は更新も、近代化もされない「博物館部隊」状態である。73式装甲車は96式装甲車で更新されつつあるが、96式は不整地走行性能が低く、戦車に随伴できないし、装甲も現在のレベルでは薄すぎる。
まるで戦車だけで戦えると思っているようだ。これでは女子高生の戦車道アニメと同じメンタリティと言われても仕方あるまい。
反面、中国含めて途上国でも採用が増えている榴弾砲や迫撃砲の精密誘導砲弾の導入もなく、ネットワーク化やドローン、対ドローン装備の採用も途上国よりも遅れている。
自衛隊の戦車部隊は敵が偵察、自爆ドローン、精密誘導砲弾、対戦車ミサイルなどを搭載した無人車両などを使用すれば、交戦する前に一方的に倒されてしまうだろう。それほど陸自の思想と装備体系は遅れている。「昭和の軍隊」と言ってもいい。
そもそも現在の防衛大綱でも大規模な敵が日本本土に揚陸してくる可能性は極めて低いと断定している。事実、そのような揚陸能力を持っているのは日本の同盟国のアメリカぐらいだ。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら