「FRBの利上げ0.5%」でぬか喜びをしてはいけない 前回の「量的引き締め」から学ぶところはあるか

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そこへ2020年春から、新型コロナ感染症によるパンデミックが全世界を襲った。パウエル議長は再びゼロ金利への回帰を決断し、それと同時にQEを再開した。FRBの総資産は再び急拡大に転じ、ついには今日に至るのである。

あらためて2つのQTを比較してみよう。前回の金融正常化局面は、下記の通り3代のFRB議長に重なる長期のプロセスであった。当時は物価が安定していたから、出口政策に時間をかける余裕があったのだ。ところが今回は、インフレ抑制のために正常化を急がねばならない。なおかつFRBの資産規模は、前回の2倍に膨れ上がっているのである。

QTには前回の経験があまり役に立たない

こうして見ると、これから始まるQTには前回の経験があまり役立たないことに気づくだろう。そもそもQTとは、中央銀行が歴史上はじめて行ったQE(最初に実施したのは2001年3月の日本銀行である)という非伝統的な政策の「後始末」という性格を有する。先例がないだけに、何が起きるかわからない。これはまだ出口政策には程遠い日本銀行にとっても同じことで、とりあえずはFRBの首尾を黙って見ていることしかできない。

今のところ、FRBにさほど迷いはなさそうだ。彼らは「インフレの番人」という中央銀行にとってもっとも重要な責務を果たしつつある。そして実際にアメリカ経済では、40年ぶりの物価上昇が起きている。そのためには利上げも行うし、QTも行う。「ハト」のように見えることがあっても、本質的には「タカ」だと考えなければならない。

”Sell in May.”(5月に売れ)とまでは申し上げないが、以前にも「『FRBは株価を支えてくれる』と考えてはいけない」で述べた通り、くれぐれも「『FRBは株価を支えてくれる』と考えてはいけない」 のである(本編は個々で終了です。次ページは競馬好きの筆者が週末のレースを予想するコーナーです。あらかじめご了承ください)。

次ページさて競馬コーナー。「3歳マイルG1戦」の勝者は?
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