「FRBの利上げ0.5%」でぬか喜びをしてはいけない 前回の「量的引き締め」から学ぶところはあるか

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これで「5月、6月、7月は0.5%ずつの利上げ、9月以降は0.25%ずつで様子を見る」という期待値が出来上がった。8月には政策金利は1.75~2.0%くらいまで上昇することになるけれども、事前の想定よりはマイルドになっている。もちろんウクライナの戦局や原油価格の動向など、先行き不透明な要素には事欠かない。FRBとしては「データ次第」で、臨機応変にそれらの事態に対応していくほかはない。

重要なのは市場を驚かさないように、日頃から金融政策の考え方を伝えていくことにある。この日の「フォワードガイダンス」は見事にととのって、市場は「FRBは恐れていたほどタカ派ではない」と受け止めた。この日の10年物国債の利回りは3%を割り込み、ドル円レートは、1ドル=130円台から129円台に戻したのであった。

改めて「QT」(量的引き締め)とは何か?

ただしこれで万事めでたし、というわけではない。多くの人の眼が金利にくぎ付けになっている間に、もうひとつの注目点であるQT(量的引き締め=バランスシート縮小)の発表についてはスルーされた感があるからだ。

FRBの総資産は、4月25日時点で8.9兆ドルもある 。5月4日の発表によれば、資産圧縮を当面は月475億ドル、9月以降は月最大950億ドルのペースで減らしていくという。このペース自体は、事前に議事要旨などで伝えられていた通り。その意味ではノー・サプライズであった。しかるに見方を変えれば、FRBは金利を少し手加減したけれども、QTは予定通りタカ派的にやりますよ、と言っていることになる。

思うに市場が警戒すべきは、利上げよりもQTであるはずだ。理由は簡単で、利上げは過去に何度も行われている。前例はたくさんあるし、市場の側にも慣れがある。ところがQTは過去に試されたのが1度だけ。しかも途中でうやむやにされている。そして今回のQTにおいては、FRBの総資産は前回の倍の規模に膨れ上がっているのである。

改めて「QTってなんだ?」というそもそものところから振り返ってみよう。

アメリカにおけるQE(量的緩和)政策は、2008年にリーマンショックへの対応として、当時のベン・バーナンキ議長が初めて導入したものだ。

FRBが国債やMBS(住宅担保証券)を購入し、市場に潤沢な資金を供給する。それまでFRBのバランスシートは、せいぜい8000億ドル程度しかなかった。それを3度にわたるQEを実施して、4~5倍の規模に膨れ上がらせたところで、金融市場はようやく落ち着きをみせた。

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