「核の脅し」強める金正恩氏が語る"独自の言い分" 「意外な第2の使命」発言は何を指すのか
ロシアも北朝鮮も制裁により国内経済が悪化している。プーチン大統領も金正恩氏も、リーダーシップを維持する手段はナショナリズムや求心力を高める軍事力の誇示や活用しかなくなっている。特に金正恩氏は2020年10月、2021年1月、2021年9月、2022年4月と過去1年半の間に4度も軍事パレードを実施し、国内独裁体制の維持と自らの核ミサイル戦力の対外的誇示に躍起になっている。
核の脅しで言えば、プーチン大統領はウクライナに侵攻した2月24日早朝に行ったテレビ演説で、「現在のロシアは世界最強の核大国の1つ」とウクライナと西側諸国を恫喝。2月末には核戦力部隊に対して「高度な警戒態勢」に入るよう指示した。以来、ロシア軍が戦術核攻撃をしかける危険性が取り沙汰されている。
つい最近でも、プーチン大統領は4月27日、ウクライナでの軍事作戦に関し、「ロシアは他国にない兵器を保有している。必要なら使う」と述べ、核の恫喝をさらに強めた。通常兵器を使ったウクライナとの戦闘が思うように進んでいないことへの焦りや、西側諸国のウクライナへの軍事支援強化を止めさせる警告の狙いがあるとみられる。
金正恩氏は、あたかもそのプーチン大統領に倣(なら)ったかのごとく、「核の脅し」をぐっと強めている。
4月25日の軍事パレードでの金正恩氏の演説
それは、朝鮮人民革命軍創建90年を記念する4月25日の軍事パレードでの金正恩氏の演説で如実に浮き彫りになった。今後の日本の安全保障を大きく左右しかねない北朝鮮の核戦略の重大な変更が述べられているため、多少長くなるが、ここでその演説を紹介したい。
金正恩委員長は演説で、核戦力を「国力の象徴であり、軍事力の基礎をなす」と述べた。そして、その核戦力を「質量的に強化し、任意(=その場その場)の戦争状況で異なった作戦の目的と任務に応じて、異なった手段で核戦闘能力を発揮できるようにしなければならない」と訴えた。
ここで言う「異なった作戦の目的と任務に応じて異なった手段での核戦闘能力の発揮」とは何か。これは、北朝鮮がこれまで開発してきた大陸間弾道ミサイル(ICBM)を使用する大型の戦略核だけでなく、基地攻撃など局地的に使う小型の戦術核の使用を示唆したとみられる。
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