「核の脅し」強める金正恩氏が語る"独自の言い分" 「意外な第2の使命」発言は何を指すのか

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また、金総書記は演説で「我が国が保有する核武力を最も速いペースでさらに強化発展させるための措置を取り続けていく」と表明し、核開発強化の方針を強調した。

さらに、「我々の核武力の基本使命は戦争を抑制することにあるが、この地で我々が決して望まない状況が生じた場合にまで、我々の核が戦争防止という1つの使命に縛られているわけにはいかない。いかなる勢力であれ、我が国の根本利益を侵奪しようとすれば、我々の核武力は意外なその第2の使命を決行しなければならない。いつでも稼働できるよう徹底的に準備されなくてはいけない」と述べた。

この金正恩氏の前半部分の発言は全く驚くに値しないだろう。金正恩氏はこれまでも自らの核兵器がアメリカ相手の「戦争抑止力」として必要だと述べてきたからだ。金正恩委員長は「我々の核抑止力は、国と民族の自主権を守り、戦争を防いで平和を守るための正義の手段」と発言もしてきた。

「第2の使命」とは何なのか

問題は後半部分の「意外な第2の使命」とはいったい何なのか。金正恩氏は詳しく述べなかったが、文脈から「抑止力」以外の目的を指すことは明らかだ。おそらく前述の低出力で実戦用の戦術核使用を念頭に置いているとみられる。

特に韓国の徐旭(ソウク)国防相が4月1日に北朝鮮への先制攻撃能力に言及したことについて、金正恩氏の妹、金与正(キムヨジョン)党副部長は同月5日発表の談話で、「南朝鮮(韓国)が私たちと軍事的対決を選択する状況が来ればやむをえず、我々の核戦闘武力は自分の任務を遂行しなければならないだろう」と述べ、有事での核兵器使用を示唆していた。

金与正氏は談話で北朝鮮が核保有国であることを何度もアピールし、「南朝鮮は核保有国に対して軍事的妄想を控えるべき」「核保有国に対する《先制打撃》?無理。妄想だ。本当にそれこそ狂気の空元気だ」と韓国を挑発するような言葉を繰り返した。

5月10日に就任する次期韓国大統領の尹錫悦(ユンソンニョル)氏も「先制攻撃」に触れたことがあり、金正恩氏も金与正氏も核戦力をこれまで以上に誇示し、韓国側を強く牽制したとみられる。

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