日本が「1人あたり」価値を上げる為に不可欠な事 国も企業も国民も長期的問題を考えねばならない

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日本でグーグルやメタ(旧Facebook)のようなプラットフォーム企業を作ることは難しい。

しかし、ビッグデータはほかにもある。とくに重要なものとして、マネーのデータの利用が考えられる。

これには2つの方向がある。第1は、銀行APIの活用によって、銀行が保有する膨大な預金データを利用することだ。

これによって、リアルタイムのデータドリブン経営が可能になる。

第2は、中央銀行デジタル通貨(CBDC)から得られるデータの利用だ。

このような大きな変革を実現するために、政府が果たすべき役割は何か?

多くの人は、政府が発展産業を育成することだと考えている。そして、政府がそうした分野に補助を与えることだと考えている。

しかし、この考えは誤っている。

政府の役割は、補助を与えることではない。補助金漬けになった産業は必ず衰退する。

政府が行うべきは、基礎的条件の整備だ。

とりわけ、変化を阻害している条件を取り除くことだ。

さまざまな分野に参入規制があり、生産性の向上を妨げている。既得権益と戦って、これらを除去することが、政府に課された最も重要な役割だ。

構造改革には痛みが伴う

上で述べたような改革を進めれば、社会構造に大きな影響を及ぼさざるをえない。

具体的な方向付けとして挙げた製造業のファブレス化とCBDCのデータ活用は、雇用の面で、大きな社会的変化を引き起こさざるをえない。

ファブレス化を進めれば、工場で働いている人たちの職が奪われることになる。製造業の就業人口は、減少しつつあるとはいえ、なおかつ膨大だ。そして、企業城下町として、高度成長期以来の製造業に頼っているところも少なくない。

したがって、ファブレス化は、大きな社会的変化を伴わずには実現できない課題だ。

中央銀行デジタル通貨は、現在の金融構造に大きな影響を与える。例えば、地域銀行の淘汰という問題が起こりかねない。こうした問題をどのように克服するかが大きな課題だ。

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