クレーマーの怒りを「鎮火」させる意外な一言 企業の謝罪文から気持ちが伝わらない理由とは

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ある会社に、自社の製品の導入を検討してもらいましたが、不調に終わったとしましょう。担当者が、電話でそのことを伝えてきました。それに対して、どのように答えればいいでしょうか。

「ご判断、承知しました。このたびは、私どもの製品の導入を検討いただきありがとうございます。今後ともどうぞよろしくお願いいたします」

「ありがとうございます」のフレーズが入るか入らないかで、相手の印象は違うはずです。

さらに、具体的に感謝すべきことを述べるのも、気持ちを伝えるいい方法です。

「プレゼンテーションの機会までいただきまして」

「わざわざ私どもの工場まで足を運んでいただきまして」

「私どもの○○に、関心をよせてくださって」

このように述べてから「ありがとうございます」と言うのです。ここであげた場面は、お互いが対立するケースです。その緊張した雰囲気を「ありがとうございます」という言葉が、魔法のようにがらっと変えるのです。

気まずい空気のなか、緊張が走る瞬間に穏やかな表情で、「ありがとうございます」と、ぜひ言ってみてください。

「ありがとう」のワンクッション

意外な挨拶によって新鮮な印象を与える例が、他にもあります。

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プロ野球のある優勝チームの監督が、優勝が決定した直後のインタビューで、スタンドのファンにむかって、「ファンの皆さん、おめでとうございます」と言ったことがあります。

「おめでとう」と言われるのは、監督や選手たちのほうだと思いがちです。でも、その監督は、ずっと応援してきたチームの優勝を見ることができたファンも同じ気持ちであり、喜びをともに分かちあおうと、そう言ったのだと思います。

普段とは異なる場面で、よく耳にする挨拶を使うと、意外な効果を生むことを覚えておいてください。

前回:「新社会人が赤っ恥をかかない意外な敬語のコツ」(4月20日配信)
合田 敏行 一般財団法人NHK財団・エグゼクティブアナウンサー

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ごうだ としゆき / Toshiyuki Goda

1958年東京都出身。1980年、東京大学文学部国語国文学科国語学研究室を卒業。
NHKにアナウンサーとして入局。東京アナウンス室では、「ひるどき日本列島」「くらしの経済」「実践はなしことば」「アイデア対決ロボットコンテスト」などの番組を担当。長崎放送局長、放送文化研究所研究主幹などを経て、現職。
現在、NHK放送研修センター・日本語センターで、企業向けの研修などを担当。

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