面倒と大規模修繕丸投げする組合が知らない真実 管理会社に施工依頼するメリットとデメリット

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実際に管理会社に工事を依頼する場合、管理組合の利益になるのかを念頭に置こう。その上でデメリットとなる部分への対策を行っていかなくてはならない。

管理組合と管理会社の関係が近すぎるため、会計内容が知られている点については、「セカンドオピニオン」として中立の立場で検証してもらうことを推奨する。工事の仕様及び見積もりを第三者のコンサルタントを起用して確認させるのも一案だ。

費用の「見える化」を図るために検討したいこと

2つ目の懸念材料は、管理会社が旧知の下請け業者へ施工を丸投げ発注することで、工事内容やコストに不透明な流れが生まれることだ。これについては、管理組合が主導して下請け施工会社を選び、費用を上乗せして管理会社と請負契約を結ぶ方法もある。

最初の項目で少し触れたコストオン方式というものだ。実際に、当事務所でもコンサルティングとして引き受けた事例もある。費用の「見える化」を図るために検討したい方式のひとつと言えるだろう。

さらにさくら事務所では、独自の施工会社選定方法としてプロポーザル方式(提案力比較型)を提案している。複数の施工会社からオリジナルの工事提案書を作成してもらい、管理組合主導で業者を選ぶ方法だ。

設計監理者により決められた仕様で行う設計監理方式と決定的に異なるのは、アンケートなどにより居住者の要望を整理した上で各施工会社が独自に工事を提案してもらう点だ。より満足度の高い業者選定が可能となり、癒着や談合などのリスク軽減にもつなげられる。

大規模修繕工事の目的は、居住者が快適かつ安全に暮らし続けられることにある。さらに建物の立地や規模、形状によってかかる時間も費用も各々異なるものだ。場合によっては中立な専門家のアドバイスも取り入れるなど入念な情報収集をした上で、自分たちにとってベストな進め方を見出すことが肝要となる。

検討の結果、管理会社に任せる方法を選ぶのなら問題はない。管理組合が主体となって進めてこそ、大規模修繕工事を成功に導くことができると言えるだろう。

長嶋 修 不動産コンサルタント(さくら事務所 会長)

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ながしま おさむ / Osamu Nagashima

1999年、業界初の個人向け不動産コンサルティング会社『株式会社さくら事務所』を設立、現会長。以降、さまざまな活動を通して“第三者性を堅持した個人向け不動産コンサルタント”第一人者としての地位を築いた。国土交通省・経済産業省などの委員も歴任している。主な著書に、『マイホームはこうして選びなさい』(ダイヤモンド社)、『「マイホームの常識」にだまされるな!知らないと損する新常識80』(朝日新聞出版)、『これから3年不動産とどう付き合うか』(日本経済新聞出版社)、『「空き家」が蝕む日本』(ポプラ社)など。さくら事務所公式HPはこちら
 

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