「持ち家or賃貸」論争、今この状況における考え方 永遠のテーマを「リスク」を切り口に判断する

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日本で会社員をしている限り、転勤がついて回ります。日本では、従業員を解雇しない代わりに、会社命令でどこにでも転勤していただきます、という雇用慣行になっているからです。「住宅を購入したので、転勤は勘弁してください。でもクビにしないでください」というのは、ちょっと虫が良すぎます。

また、転職の時代になり、キャリアの発展に合わせて仕事・会社を変えるのが当たり前になっています。転職すれば、勤務地が変わることがあります。住宅を購入して決まった場所に住み続けなければいけないというのは、キャリアの選択肢を狭めてしまいます。

さらに、老後生活は、自分一人か夫婦二人。「家族用に」と広いマイホームを構えると、長い老後生活で持て余し、掃除すらままなりません。老後まで待たずとも、離婚して一人暮らしになることも考えられます。

以上から、マイホームを購入せず賃貸物件を借りて、キャリアやライフステージに合わせて住宅を変えるというのが、リスクという観点からは合理的な選択なのです。

マンションには大規模修繕のリスク

とはいえ、「マイホームが夢」「一国一城の主になりたい」といった願望から、リスクを承知で住宅を購入することもあるでしょう。その場合、一戸建てを買うべきでしょうか、マンションを買うべきでしょうか。

ここで、マンションに固有のリスクを考える必要があります。マンションには、「大規模修繕を他の住民と合意できるか」という難問があり、お勧めできません。

一戸建てでもマンションでも、建築後20年とか経ったら、大規模修繕が必要になります。一戸建ての場合、修繕する(しない)ことを家主である自分で判断できます。それに対しマンションの場合、数十人の住民、タワーマンションの場合、数百人の住民と合意しなければなりません。

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