「空気感染」日本であまり知られていないカラクリ コロナ対策にパーティションはむしろ危険?

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換気と感染については、結核対策を中心に、これまで多くの研究が報告されている。前出の『サイエンス』の論文では、室内のCO2濃度を700-800 ppmに抑制すれば感染は拡大しないと書かれている。2020年に台湾の疾病対策センター(CDC)の研究チームが『室内空気』誌に発表した研究によれば、換気が不十分な大学の建物で27人の集団感染が生じたが、換気体制を強化し、CO2濃度を3204±50 ppmから591-603 ppmまで抑制したところ、感染は収束したという。

私も、医療ガバナンス研究所のCO2濃度を測定してみたところ486 ppmだった。医療ガバナンス研究所の場合、来客などで在室人数が増えると、すぐにCO2濃度はあがる。講師を招き、8人ほどのメンバーと勉強会を行った際には、10分ほどでCO2濃度は1200 ppmとなった。私どもが有するCO2モニターは1000 ppmを超えるとアラームが鳴る。窓を全開にして換気すると、700台まで低下した。約2時間の講義中、CO2濃度をモニターしながら、窓の開閉を繰り返した。

建物に備わった換気能力が重要

ただ、窓の開閉による換気には限界がある。これから日本は夏場を迎えるが、真夏の日本で換気を強化するのは難しい。外気と比べ、低温の空気が低層に貯留する夏場には、5分間、窓を全開にしても、入れ替わる空気は約3割に過ぎないからだ。サーキュレーターやレンジフードを稼働させてもせいぜい7割だ。感染対策にはこまめに換気するしかないが、どの程度の実効性かははっきりしない。

では、何が重要なのか。それは建物に備わった換気能力だ。職場であれ、高層住宅であれ、高層階は風が強く、窓を開けることができない。この点については、2003年、シックハウス対策目的に建築基準法が改正され、24時間の換気設備の設置が義務づけられた。

換気効率は建物毎に大きな差がある。筆者が、帝国ホテルの孔雀の間で講演をした際、インターン中の大学生が随行し、CO2濃度を測定したが、200人程度の聴衆が入った密室の広間のCO2濃度は436-499 ppmの範囲に留まった。高度な換気システムを装備している証だ。こういうところでは、クラスターは生じにくい。

政府は、飲食店を一律に規制しているが、これは合理的ではない。建物の換気能力には大きな差があり、最近、建築された高層建築物は感染のリスクは極めて低いからだ。問題は、換気設備が装備されていない古いビルだ。では、換気設備が整っていない建築物はどうすればいいのか。これについても、研究が進んでいる。それはHEPAフィルターと紫外線の活用だ。

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