「空気感染」日本であまり知られていないカラクリ コロナ対策にパーティションはむしろ危険?

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HEPAフィルターとは、空中の0.3 µm以上の微細粒子を捕集できる装置だ。病院の骨髄移植病棟などで院内感染対策に用いられ、その有効性は多くの臨床試験で証明されている。最近は、市販されている空気清浄機にも利用されている。

コロナに対する実証研究の結果も報告されている。昨年10月6日、イギリス『ネイチャー』誌は、イギリス・ケンブリッジ大学の研究を紹介している。この研究では、コロナ病棟にHEPAフィルターを設置した前後で、空中のコロナ粒子の量を測定しているが、設置前は5日中4日で空中からコロナ粒子を検出できたが、HEPAフィルター稼働後に測定した5日間では一度もコロナは検出されなかった。

HEPAフィルターを装着した空気洗浄機はコロナ対策に有用だ。HEPAフィルターの価格は数千円~数万円。『ネイチャー』の論文には、「安価なポータブルフィルターが、コロナやその他の病原菌を効率よくスクリーニングする」という表題がついている。もっと国民に情報を伝えるべきだ。ところが、過去1年間で全国紙5紙が「HEPAフィルター」という単語を用いた記事を掲載したのはわずかに12回だ。最新のコロナ研究の成果が国民に還元されていない。

天井付近で紫外線を水平照射するのが有効

さらに、昨年6月、アメリカ疾病対策センター(CDC)は、換気手段が限られている施設では、紫外線を天井付近で水平照射し、浮遊するコロナ粒子を不活化することを推奨した。その根拠として、CDCが挙げた論文は、2020年6月にハーバード大学の研究チームが、『米医師会誌(JAMA)』に発表したもので、上層への紫外線照射は1時間に24回の換気に相当すると推定している。

実は、このような対策は、コロナに限ったものではない。コロナ流行後、多くの呼吸器ウイルスは空気感染によって伝播することが明らかとなった。昨年4月、イギリス・ブリストル大学の研究チームは、HEPAフィルターと紫外線照射を活用することで、コロナを含む呼吸器感染症の頻度を41%減少させたとアメリカ『プロス・ワン』誌に報告している。

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コロナ流行以降、インフルエンザをはじめ、多くの呼吸器ウイルスの流行が抑制されているのは、手洗いやうがいに加え、空気感染対策が世界各地で推し進められたためかもしれない。このように考えると、科学的な根拠に反し、空気感染の関与を否定し続けてきた厚生労働省、国立感染症研究所、周囲の専門家たちの責任は重い。まるで、中世の教会のようだ。日本のコロナ対策は、もっと科学的で合理的でなければならない。

上 昌広 医療ガバナンス研究所理事長

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かみ まさひろ / Masahiro Kami

1993年東京大学医学部卒。1999年同大学院修了。医学博士。虎の門病院、国立がんセンターにて造血器悪性腫瘍の臨床および研究に従事。2005年より東京大学医科学研究所探索医療ヒューマンネットワークシステム(現・先端医療社会コミュニケーションシステム)を主宰し医療ガバナンスを研究。 2016年より特定非営利活動法人・医療ガバナンス研究所理事長。

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