「空気感染」日本であまり知られていないカラクリ コロナ対策にパーティションはむしろ危険?

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では、どうすればいいのか。コロナ流行以降、呼吸器ウイルスの研究は急速に進んだ。最新の研究成果に基づいて合理的に対応すべきだ。

従来、コロナを含め、呼吸器ウイルスは、咳・くしゃみ・会話を通じて放出される分泌物(飛沫)を介して、周囲にうつると考えられてきた。通常、そのサイズは数百μm(マイクロメートル、1マイクロは100万分の1)と大きく、いったん放出されても、20センチメートル程度以内で地面に落下する。地面に落ちると、もはや感染しない。

一方、エアロゾルは、その大きさが通常百μm以下で、数μmのものも多い。このような微小な粒子が空中に放出されると、その温度は約37℃と気温より高いため、すぐに上層に移動する。そして、その間に水分が蒸発する。

この結果、ウイルス粒子が濃縮された微小なエアロゾルが形成され、数時間にわたって空中を浮遊しながら移動する。閉鎖空間であれば、上層に蓄積する。その場に居合わせた人が、濃縮したコロナ粒子を吸い込めば感染する。現在、コロナ感染の主体は、このようなエアロゾルの吸入による空気感染であることが世界的なコンセンサスとなっている。

屋外は感染リスク小さい、では屋内ではどうすれば?

空気感染の重要性については、流行当初から指摘されていた。2020年4月、中国・東南大学の医師たちが、7324例の感染者の感染状況を調べたところ、屋外で感染したのはわずかに1例だった。咳やくしゃみを介した飛沫感染は屋内・屋外に関係なく起こる。屋外で感染のリスクが低下するなら、エアロゾルの関与が大きいと考えるのが妥当だ。屋外なら空中に放出されたエアロゾルは、その場で希釈されるからだ。わが国では、屋外でもマスクをつける人が多いが、これは意味がない。夏場の熱中症対策を考えれば、止めるべきといっていい。

では、屋内ではどうすればいいのだろう。この点でも研究は進んでいる。対策の基本は換気だ。換気の指標は空中の二酸化炭素(CO2)濃度だ。多数のCO2モニターが市販されており、5000~1万円で購入できる。CO2モニターを用いて、職場や自宅のCO2 濃度を測定すれば、その部屋の換気状況がわかる。ちなみに、空中のCO2濃度は約410 ppmだ。厚労省は良好な換気基準として1000 ppm以下としている。

次ページ室内のCO2濃度抑制が感染対策となる
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