ティム・クックが語ったジョブズから誘われた日 「頭がおかしい」と言われてもアップルに移った訳

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クック:頭がおかしいと思われました。たいていの人はこう考えます。『世界でもナンバーワンのパーソナルコンピュータメーカーにいるのに、なぜやめようとするんだ? 将来は約束されたようなものなのに』と。きちんと腰を落ち着けて、エンジニアリング解析のようにこれはプラス、これはマイナスと判断したうえでの結論ではないわけですからね。そうした分析が導き出す答えは、たいてい『現状維持』です。ところが私の頭のなかで鳴り響いていたのはこんな言葉でした。『西を目指すんだ、ティム。君はまだ若い、西を目指せ』とね。

ルーベンシュタイン:あとから考えれば、それこそあなたがプロフェッショナルとして自らの人生に下したベストの判断でした。少なくとも私はそう思います。

クック:おそらく人生におけるベストの判断だったのでしょう。そこに『プロフェッショナル』という言葉を付け加えるべきかどうか、確信はありませんが。

うまくいかないなら、会社でなく自分に問題がある

ルーベンシュタイン:アップルに入り、スティーブと働き始めるわけですが、思ったよりやりやすったですか? やりにくかったですか? それとも想像していたより困難だけれど、やりがいのある仕事だったでしょうか?

クック:ひと言で言うなら、自由がありました。何か大きな構想があれば、それをスティーブに話すことができます。もし彼がそれに共感すれば、『オーケー』と口にします。あとは自分で取り組めば良いのです。企業のシステムを麻痺させてしまう組織の階層や官僚的体質、あるいは必ずしなければならなかった事前調査などにどっぷりつかっていた私には、企業がこんな形で成り立つなんて信じられませんでした。アップルはその点、まったく異なった会社です。もし自分がその構想に対してうまく事が運べなければ、近くの鏡をのぞき込めば良いんです。うまくいかないのは会社のせいではありません。その鏡に映っている人物に問題があるんです。

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