ティム・クックが語ったジョブズから誘われた日 「頭がおかしい」と言われてもアップルに移った訳

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クック:ええ、まず生産ラインの設計を担当するプロダクション・エンジニアからスタートしました。当時はロボット工学が大きく成長し始めたころで、私たちも自動化に着目していました。必ずしもうまくいったとは言えませんが、ロボット工学から多くを学んだのは事実です。

ルーベンシュタイン:そこに12年在籍し、次に移った会社がコンパックです。当時コンパックは、パーソナルコンピュータの製造分野では大手企業の一角を占めていました。

クック:業界トップでした。

ジョブズと数分話しただけで一緒にやりたくなった

ルーベンシュタイン:そこで6カ月ほど経ったころ、スティーブ・ジョブズ本人から、あるいは彼に頼まれた人物から電話があって、こう言われるわけですね。『アップルに来ないか』と。コンパックに比べれば、アップルはまだまだ小さな会社でした。なぜ面接を受けてアップルに移ったのでしょう?

クック:良い質問です。当時スティーブはアップルに復帰し、どうにか経営陣を入れ替えようとしているときでした。私は、『これは業界の先駆者と話ができる絶好の機会だ』と考えたのです。

スティーブと会ったのは土曜日で、数分話をしただけで『一緒にやりたい』という気持ちが湧きあがってきました。衝撃的でしたね。彼には、それまで会ったどんなCEOにもない目の輝きがありました。みなが右に曲がっていくのに自分は左に曲がろうとする–––彼はそんな人物でした。話を聞くと、彼がやっているのは誰もが考える一般的通念とはまったく異なることばかりです。

多くの経営者が、無駄に経費ばかりかかる消費者マーケットから手を引こうとしていました。でもスティーブはまったく逆です。消費者に対するサービスをより強化しようとしたのです。彼の話だけでなく、彼の問いかけも普通の質問とは異なるものでした。面談を終えて帰るころには、私の気持ちは決まっていました。『本当にこの会社で働きたい。なんとか採用してくれないだろうか』ってね。

ルーベンシュタイン:友人たちは、考え直すべきだと言いませんでしたか?

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