子どもの学力「親が共働きか否か」で差は出るのか 家庭の経済状況で左右される面があり一様でない

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先のエビデンスは、乳幼児期の親の就労に焦点が絞られている。子どもがもっと大きくなったときの親の就労の影響を調べた研究は、因果関係ではなく、相関関係を評価したものに限られる。それでも何件かの研究はあり、学業に関するエビデンス(学力テストの得点、卒業の有無)を考慮すると、相関関係はおよそゼロになる傾向があった。そして、両親がフルタイムで共働きでも、片親が働き片親が働いていない場合でも、結果は同じで子どもへの影響は見られなかった。

ただし、結果には解釈が微妙なものも含まれている。1人の親がパートタイム、もう1人がフルタイムで働く家庭の子どもは、学校の成績がいちばんいい傾向があった。両親がフルタイムで働く家庭や、1人の親はまったく働かない家庭よりもよかったのだ。これは就労形態によるものかもしれないが、私はおそらく家庭間の違いが原因だろうと考えている。

「子どもの将来」を左右する話ではない 

また、両親が働いていると、より貧困な家庭の子どもにとってはプラスの影響があり(つまり働いているほうがいい)、より裕福な家庭の子どもにとってはそれほどプラスではない(あるいはわずかにマイナス)傾向が見られる。ここで比較されたのは、学力テストの得点、学校の成績、肥満といった結果だ。

研究者が解釈しがちなのは、貧困家庭では両親が働くことで得られる収入が子どもの発達成長に影響し、一方の裕福な家庭では、親と一緒に「より充実した経験」をする時間が失われたことが影響したということだ。ありうることだが、こうした評価は相関関係だけなので、データから多くを読み取ろうとしても難しい。たとえこうした解釈を受け入れても、比較されているのは子どもの活動であり、育児休業制度ではない。親の同居以外の要素が影響したことは否定できない。

まとめると、エビデンスの重さから、親の就労が子どもの成長発達全体に及ぼす影響は小さいかゼロであることが示唆される、と私は考える。

家庭の状況により、この影響は多少プラスかマイナスになりうる。だが、働くことを決めたからといって、その決定が子どもの将来の成功を約束するわけでも、壊すわけでもない。

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