国内自動車メーカー出揃ったEV動向、今後の行方 EVメーカー化のホンダと日産、追従するトヨタ
日産の発表は、性能や原価など含め、かなり具体的に語られた。トヨタが、これから材料を探すと述べたのに対し、日産は電解質に硫酸化物系を使うことを確定したという。これによって正極材料の選択幅が広がり、性能を確保しながら原価低減が可能になりそうだ。負極材料についても選択肢を得られ、容量の増大が可能になるともいう。そして目標とする性能は、既存のリチウムイオンバッテリーに比べ、容量で2倍、原価については75ドル/kWhを目指すとのことだ。リチウムイオンバッテリーの原価は、100ドル/kWhをいつ切るかが語られ続けているが、日産が2028年に全固体電池を市場導入するのであれば、6年後には実現することになる。現在、リチウムイオンバッテリーの原価は135ドル/kWhほどとされるので、4割以上安くなる計算だ。
充電時間についても、これまでのリチウムイオンバッテリーに比べ1/3まで短縮することを目指していると語っている。そうなると、現在は30分で考えられている急速充電時間が10分程度になるのだから、エンジン車の燃料補給とほぼ変わらず、エンジン車の優位性がまたひとつ減ることになる。
リーフで培った経験が全固体電池に活きる
ここまで衝撃的な内容を具体的に語れたのは、日産ならではのことではないか。
2010年のリーフ発売以来、12年にわたりEVを世界で販売し続け、そのリチウムイオンバッテリー使用状況をすべて日産は手の内にしている。日産がNECと共同開発したリチウムイオンバッテリーは、ラミネート型と呼ばれる独特な形状の薄型で、ラミネートという柔軟性のある容器に収めていることが、今回の全固体電池開発に大きな意味を持つと私は考えている。
全固体電池は、電解質を含め電極など内容物すべてを固体とすることで、既存の液体を使うリチウムイオンバッテリーに比べて高性能化できると期待されている。だが、全固体であるがゆえの難点も指摘されている。
全固体電池も原理はリチウムイオンバッテリーと同じだ。正極と負極の間をリチウムイオンが往復することで充放電が行われる。それに際し、リチウムイオンの移動によって、電極にリチウムイオンが集まることにより応力が発生し、どうしても固体が膨れるような状態となる。トヨタの研究発表でも、固体の電解質に隙間ができ、劣化が生じるとしている。しかも箱型など金属容器を使う方式では、その応力を逃がす術がない。しかし、柔軟性のあるラミネート容器であれば、応力をいなすことができるだろう。
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