普段のごみ収集サービスは、東京23区であれば、清掃の拠点となる清掃事務所(各区が地区ごとに設けている)から提供される。清掃サービスを提供するうえでの要となる場所であり、そこには作業員や運転手といったヒト、清掃車等のモノ、収集業務に関するさまざまな情報が存在している。
仮にそこでクラスターが発生すると、清掃サービスは止まってしまう。最悪の場合、ごみが路上に放置される状況に陥り、ごみが腐敗して臭気が漂い、蛆(うじ)がわき、ネズミが行き交う状況へと陥る。
筆者が入った清掃現場で働く方はこのことを十分に理解し、自らが感染してサービスを止めてしまわぬように、感染防止に向けてかなりの努力を重ねていた。多くの清掃労働者は、こまめな手指の消毒やうがいを心がけ、昼休みは接触を可能な限り少なくし、業務終了後は同僚と飲食には行かず真っすぐに家に帰る、といった対策を取ってきた。そして、いつもどおりの清掃サービスを提供できるよう体調を整えてきたが、それでも、これだけ蔓延していると感染は完全には防げない。
清掃サービスの維持のためには何が必要か
現場での収集作業を通じて、私たち生活者が清掃サービスの提供を受け続けるためには、清掃労働者の感染リスクを可能な限り低減させていく必要があると感じた。その具体的な事例を紹介する。
私たちにできることは単純明快だ。それは、「自治体が定めたルールに基づいてごみを分別し、指定された曜日や時間や場所にごみ袋をしっかりと結んで鳥獣対策を施して排出する」である。
2020年4月に緊急事態宣言が発出された際には、ごみ収集は危険を伴うと言われていた。しかし、これまでの実践が示すように、通常のごみ袋を清掃車に積み込む収集作業自体から感染するケースは見受けられない。
実際の収集作業をひもとき、どの部分に感染リスクが高まるかを考えると、それは紛れもなくイレギュラー対応においてである。このイレギュラー対応をなくせば清掃サービスは自ずと継続されていく。
筆者は緊急事態宣言下やまん延防止等重点措置となっている期間に、東京都北区、新宿区、神奈川県座間市で収集作業を体験した。先述のとおり清掃サービスの維持が社会的な課題となっているにもかかわらず、そこで直面したごみ排出の現実に落胆し、怒りを覚えた。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら