大和証券Gが新体制スタート、アジア戦略は苦戦必至
■アジア強化でグローバルプレゼンスを向上できるか
大和にとっての大きな課題は2つ。アジアビジネス強化を軌道に乗せられるかと、赤字基調の業績を早急に建て直しできるかだ。特に合弁解消後に弱体化が懸念される投資銀行部門をどう強化するのか、将来的に全面的な資本・業務提携を含めた再編策を視野に入れるかだろう。
アジア強化については、市場の成長性では先行き有望な反面、競争激化で非常に厳しい闘いが予想される。 大和は大和CMの香港現地法人を「第2本社」化し、アジア株・デリバティブ分野で約300人増強、引き受けおよびM&Aビジネス分野で約100名増強など人員体制も強化。アジア関連ビジネス推進のため1000億円規模の資本増強も行っている。社長の年俸を上回る部門ヘッドクラスの人材を続々とヘッドハントしてきている。
こうした体制強化で、11年度には日本を除くアジア・オセアニア全体での営業収益を530億円とする目標(09年度実績は約150億円、10年度は300億円強の計画)だ。また同地域の経常利益は09年度6000万円に対し、10年度は先行投資で赤字(4~12月で71億円の赤字)だが、11年度には黒字化を目指す。今後1~2年でアジア株のブローカレッジで世界トップ5、株式引受業務でベスト10に入ることを目標に掲げている。
しかし、アジアには世界の成長市場として欧米投資銀などが大挙して参入。地元の証券会社も成長している。アジア株ビジネスといっても、顧客の中心は欧米。欧米市場での足場が強く、ビジネスインフラで全世界共通の「グローバルプラットフォーム」を持った欧米投資銀行に対し、日本では強いが欧米の基盤に劣る大和がどこまでシェアを伸ばし、収益を上げられるか。高コストに見合う高収益の創出は簡単ではないだろう。
日比野氏は「アジアのためのアジア戦略ではない。国内のホールセール、リテールのお客様の競争力を高めることがゴール」と述べ、あくまで日本の顧客を対象としたビジネスを中心に据えることを強調する。そして、「世界最速で拡大する経済圏を押さえることで、結果的にグローバルプレゼンスを高めることができる」「プロダクトラインを全面的に拡大して一気にグローバルベースというのはリスクもあり、そこまでの戦略は採らない」という。
ただ、“アジア偏重”の印象が強い大和の強化策が、どこまで本当の意味でのグローバルプレゼンス向上につながるかは疑問が残る。日本の企業や個人投資家は今や、証券会社との取引において国内系か外資系かのこだわりは薄れている。グローバルな情報力や品ぞろえ、手数料の安さやサービスの一貫性といった要素がより重視される。証券引き受けやM&Aアドバイザリー業務でも、当然ながらアジアに限定しないグローバルな販売力や情報力が決め手となる。08年にリーマン・ブラザーズの部門買収という大決断をした野村ホールディングスの幹部は、「われわれが目指すのはグローバルハウス。(大和のような)アジアハウスにはなりたくない」と話す。
アジア事業の黒字化目標もハードルは高いだろう。10年度に入っても四半期を重ねるごとに赤字が拡大しており、人件費などコスト増の圧迫がうかがえる。「熾烈なシェア争いが続くアジアで利益を出すのは至難の業」(大手証券)とも言われ、一段と赤字が拡大するおそれもある。