P-1哨戒機の対英輸出計画は「画餅」である 武器輸出で華々しい成果を狙い過ぎ

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P-1はジェットエンジン機。哨戒機は海上低空を飛行することが多くジェットエンジンの寿命が短くなる懸念がある(写真:海上自衛隊)

専用に開発された4発のジェットエンジンにも問題がはらんでいる。

まずジェットエンジンゆえの課題が大きい。低空を哨戒飛行するときにジェットエンジンは高い濃度の塩分と水分を含んだ空気を大量に吸い込むことになる。このためエンジンの寿命が短くなるのは勿論、予期せぬトラブルが発生する危険性もある。エンジンの寿命も短くなるだろう。

またターボプロップ機は例えば4基あるうちの1基のエンジンを止めて、プロペラを固定して燃料消費を抑えるということもできるが、ジェットエンジンは飛行中にエンジンを止めても内部のファンが回ってしまい、空気抵抗が増えるので燃費の向上にあまり貢献しない。また再起動にしても確実性が期待できない。

だからこそ、多くの国が哨戒機にはジェットエンジンよりも耐久性が高いターボプロップエンジンを使用しているのである。

2発機でも人命は尊重できる

4発機ゆえの課題もある。海上幕僚監部は「4発のエンジンは生存性を高めるため。他にふさわしいエンジンが存在しないから国産開発した」と説明する。開発したIHIはロールス・ロイスやGEなど外国エンジンの下請けとしての評価は高いが、自主開発のエンジンメーカーとしての実績は少ない。しかも「実用に際して行なわれた試験運転は3千時間ほどで、商業機のエンジンよりも一桁少ない」と某元海自将官は証言している。エンジンの信頼性は相当怪しいとみるべきだろう。

確かにかつては大洋を横断するような旅客機は双発ではなく、4発ないし3発であることが求められた。これは双発機の場合、エンジン1基が停止した場合に備え、最寄りの空港から120分以上離れたところを飛ぶことが許されなかった。だが現在ではエンジンの信頼性、推力が高まり、双発機でも大洋の横断が可能となっている。

このためボーイングの777やエアバスのA350などの、P-1よりもはるかに大型の旅客機でも双発となっている。故にP-8は737と同じ民間で使用されている実績も高く、量産によってコストを抑えたエンジンを2発使用している。海自よりも遥かに実戦を想定し、人命を尊重する米海軍ですらコスト高騰のために敬遠した4発エンジンの機体の開発を、海自は決定したのだ。

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