開発費については、「C-2とP-1の両機併せて約3400億円を予定」としてきた。しかし、それぞれの機体個別は発表されず、文字通りのどんぶり勘定だ。納税者に対する説明責任を果たしているとは言いがたい。先述のようにP-1の開発費は約3081億円、開発中のC-2の開発費は現在まで約2222億円、合計約5300億円まで高騰している。
搭載システムの性能も怪しい。NECが開発したソノブイ(航空機から投下して使用する使い捨ての対潜水艦用音響捜索機器)のデータ処理機は性能不十分で、沖電気がライセンス生産するカナダ製のものが搭載されている。そもそもNECや沖電気が生産している対潜用のソノブイは性能が低く、価格も米国製の数倍もする。そのため、海自は米海軍が主催する演習「リムパック」に参加する際には米国製ソノブイを使用している。
P-1は中途半端な予算をつぎ込み、機体、エンジン、搭載システムのどれも中途半端な予算しか投じることができず、能力や信頼性が怪しい哨戒機となっている。「三兎を追うもの一兎も得ず」的な状態な哨戒機になってしまった。
本来ならばP-1の開発にあたっては機体、エンジン、システムのすべての開発はあきらめて既存のターボプロップ機を採用すれば、試験や搭載システムの開発に潤沢に予算を配分でき、トータルの開発費、調達費を大幅に安くできたはずだ。
現用のP-3Cを延長運用すればよかった
では、どのようにすれば、よかったのだろうか。
そもそも、現用のP-3Cは近代化、延命化を施せばさらに20年以上の延長運用が可能だった。これならば費用は一桁安くできたはずだ。
新型哨戒機の開発はP-3Cを延命し、米国のP-8の運用状況などを見ながら2020年ぐらいから始めてもよかった。
今後は、P-1の高い「固定費用」が海自の予算を圧迫することになるだろう。現状のP-3Cでも整備予算が確保できず、既存の機体から部品を取り外して、他の機体に使用する「共食い整備」をしている状態であり、稼働率は相当下がっているとみられる。P-1が多数就役すれば、なおさら海自の予算を圧迫することが予想される。
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