口の中で野菜がとける「春野菜スープ」を作るコツ 素材を小さく切れば口にさまざまな味が広がる
先日、知人がヴィーガン料理の本を出した。ヴィーガン(Vegan)とは「Vegetarian」(菜食主義者=ベジタリアン)の最初の3文字と終わりの2文字をつなげた言葉で、日本語では「完全菜食主義」と訳される。その料理は乳製品を含む動物性食材、ハチミツやゼラチンなども使わない、というもので、厳格な主義者は食事だけではなく、あらゆる目的において動物性のものを使用しない。
一方、この十年あまりで増えているのはそこまで厳格ではなく、時々ヴィーガン食を選択するフレキシ・ヴィーガンという考え方。その背景にあるのは環境意識の高まりである。
野菜主体の日本料理は環境にやさしい
例えば、トウモロコシで飼育された牛肉などの赤身肉の生産は、環境への負荷が高いことがわかってきた。反対に地元で育った野菜は負荷が低い。そういうことであれば普段の食事でも肉を減らし、植物性の食品を中心に組み立てるというのは自然の流れ。ヴィーガンは栄養不足のリスクがあるが、たまになら身体にもいいだろう、というわけだ。
ヴィーガンほど極端ではなくても、日々の食事において動物性の食材を摂りすぎないように、そして身近で採れる新鮮な野菜を多く使うことは人にも環境にもやさしい、ということに多くの人が気づいたわけだが、考えてみれば、もともと日本の料理は野菜が主体で、淡白な野菜に鰹節や昆布、しょう油や味噌といったうま味を含む食材を組み合わせることで、満足感を出している。
なぜ、このような料理法が生まれたのか。それはおそらく日本では動物性タンパク質の摂取が難しかったからだろう。
肉類の代わりにうま味を含ませた野菜、例えば大根はいわばバーチャルな肉だ。昔の人たちはそれを食することで満足感を得ていたのではないか。動物性の食材を減らすのが世界の潮流だが、日本の料理はそれを先駆けていたともいえる。
この春野菜のスープはその考え方にならい、少量の生ハムで味を補っている。実は生ハムのうま味成分は肉類に含まれるイノシン酸ではなく、日本人にも馴染み深いグルタミン酸。ベーコンではなく生ハムを使うことで、昆布出汁のような淡いおいしさが出る。
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