エクソンモービルは、何がすごいのか 「石油の帝国」、国際政治経済を動かす黒幕

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合併以降、エクソンモービルは、かつての東インド会社が香辛料や茶を求めて事業展開したように、石油と天然ガスを追い求めて世界中を闊歩するようになる。石油・天然ガスを爆食しつづける現代社会のエネルギー需要を満たすため、ときには独裁体制や暴力的体質の国とも付き合うことを余儀なくされていく。

たとえばインドネシアでは、ガス需要高まる日本へLNGを供給するため、独立運動や小規模紛争が続くアチェ州にてガス田開発を行い、ゲリラ軍のような独立派組織や人権侵害著しいインドネシア国軍との折衝も経験することになる。

信念を貫き通すエクソンモービル

また、中央アフリカのチャド共和国では、独裁者で私腹を肥やすことに熱心な同国中央政府の協力をえながら、同国南部の油田開発を推進する同社の姿も本書で描かれている。企業帝国たるエクソンモービルにとってみれば、株主の利益を最大化することが最も重要なので、国家とは違い、ときには腐敗大国とも共存共栄をはかっていくことがある。誰になんといわれようと、一企業として、最後はリスクとリターンを比較し、ビジネスの推進を決めていくのだ。チャド共和国のような国では、米国政府以上のプレゼンスと発言力をもって地元政治家と対峙していくも珍しくない(同社従業員の旅程はチャド軍が護衛するほどだ)。

同社が米国を本拠地とする企業であっても、米国政府の外交政策とは一線を画すことは多々ある。イラクでは、同国内部の民族対立を悪化させることを懸念するオバマ政権の圧力にも屈することなく、イラクからの独立を目指すクルド地方に入り込み、同地域の油田を開発することを発表した。エクソンモービルは、あらかじめオバマ政権には何も知らせず動いたという。この巨大企業帝国にとっては、石油埋蔵量を確保・開発することが優先で、米国政府との歩調合わせは二の次である。

米国国内では、政府から恩恵を受けることがないよう、あえて補助金は一切受け取らない方針だという。反対に、化学製品規制、外交政策、気候変動問題に至るまで、その潤沢な資金とネットワークを投入し、米国政府を「教育」する方針を打ち出している。一般的なエクソンモービルの投資プロジェクトは四、五十年と長期間にわたるものであるため、長期的に安定した政策・税制が継続するよう議会とホワイトハウスに働きかけるのである。

エクソンモービル前社長はこういう、「大統領は次々と変わっても、エクソンモービルはエクソンモービルであり続ける」と。

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