分割取得も可能になった「育児休業」改正ポイント 4月から法改正、男性の育児休業のハードル下がる

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ただし、育児休業給付金を貰うためには育児休業開始日の前2年間に12カ月以上雇用保険に加入していること等の要件があるため、要件を満たさない労働者は育児休業給付金がもらえない場合があります。また、育児休業期間が月末等の場合は労働者および会社の両方の社会保険料が免除されます。

次に育児休業制度に関するよくある間違いを紹介していきましょう。

誤解1 妻(夫)が専業主婦(専業主夫)の場合は、育児休業は取得できない

以前は、妻(夫)が専業主婦(専業主夫)の場合、育児休業を取得することはできませんでしたが、2010年の改正により、妻(夫)が専業主婦(専業主夫)であっても育児休業を取得することができるようになりました。

誤解2 仕事が忙しい場合、会社は育児休業の申出を拒むことができる

先述したとおり、労働者が育児休業を申し出た場合、会社はその申し出を拒んだり、育児休業の期間を一方的に変更させることはできません。もし、育児休業を取得させなかったり、強制的に育児休業期間を変更させた場合は労働局から指導を受ける可能性があります。また、労働者が育児休業を申し出たことに対し、解雇や雇止め、降格などの労働者に対し不利益な取扱いが実際に行われた場合は「育児休業を申し出たことに対する不利益取扱い」として労働局から指導を受ける可能性があります。

さらに、労働者が育児休業を申し出たことに対し、上司から「休みを取るなら辞めてもらう」「次の査定の際は昇進しないと思え」と言われたり、同僚から執拗に嫌味を言われた場合はマタニティーハラスメント、パタニティハラスメントに該当し、これに対し会社はハラスメント防止措置を講じる必要があります(ハラスメント防止措置を怠った場合も労働局から指導を受ける可能性があります)。

パート、アルバイトでも取得が可能

誤解3 育児休業は何回も取得できる

育児休業は出産日から子供の1歳の誕生日の前日までの期間取得することができますが、通常1回のみの(2022年10月から2回)取得となります。ただし、公共の保育園に申し込んでいたが、定員等の関係で入園できない場合等特別の事情がある場合は2歳まで延長することができます。

誤解4 1日だけの育児休業は取得できない

育児休業は最長、出産日~子の1歳の誕生日の前日まで取得できますが、最短では1日だけ取得することも可能です。ただし、その日が会社の定休日等就業の義務がない日は取得できません。また、誤解3で説明したとおり、1日だけ取得した場合でも育児休業を取得したことになるため、再度育児休業を取得することはできません。

誤解5 正社員じゃないと育児休業は取得できない

正社員だけではなくパート・アルバイトの方でも育児休業を取得することができます。ただし、有期雇用労働者(雇用契約期間が1年間、6カ月間など、期間を定めて会社に雇用されている労働者)については、子が1歳6か月に達する日までに、雇用契約期間が満了することが明らかでないことが必要です。

2022年4月の改正で「入社1年以上」という要件が撤廃されましたが、会社と労働者の代表とで一定の取り決め(労使協定)をしている場合は、入社1年未満の労働者(正社員も含む)は育児休業を取得できません。

また、育児休業給付金をもらうための要件を満たしていないパート・アルバイトの方には育児休業給付金は支給されません(つまり、育児休業はできるけど給付金はもらえない状態もあります)。

2022年4月の育児休業の主な改正内容を確認していきましょう。

まず、妊娠・出産(本人または配偶者)の申し出をした労働者に対する個別の周知・意向確認の措置が必要になります。

労働者本人または配偶者の妊娠・出産等を申し出た労働者に対して、会社は育児休業制度に関する以下のすべての事項を説明し、申し出た労働者から育児休業を取得するかどうかの確認を、個別に面談等により行わなければならないこととなります。説明事項としては以下のとおりとなります。

 a 育児休業制度の説明
 b 育児休業の申し出先
 c 育児休業給付金に関すること
 d 労働者が育児休業期間について負担すべき社会保険料の取り扱い
次ページ説明しないとどうなる?
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