「ルールを決められると破りたい」ロシア人の本音 あまりに多様なロシア人を束ねるのは難しい

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稼げる金額だけでいえば欧米の方が割がいいはずですが、ロシア語が通じるし、旧ソ連諸国なら労働ビザも取りやすいということのようです。

GDPのかなりの割合がロシアからの送金で成り立っている、という国もあり、こうしてみると旧ソ連諸国の中におけるロシアの存在感はやはり侮り難いものがあります。

ちなみにプーチン大統領自身はロシア人(ルースキー)ですが、こういう国を「調停者」として治めていかないといけないわけですから、ロシア国民(ロシヤーニン)全体のリーダーとして振る舞わなければなりません。

「ウケ」を狙うプーチン

ロシア正教会とは親しくするけれども、イスラム教の大モスクも建設する、ユダヤ教のシナゴーグにだって訪れてみせる、という具合です。ただし、最近では微妙な変化も見られるようになりました。2020年7月の憲法改正で、「ロシアは千年の信仰に基づく国家である」という文言が挿入されたことがそれです。

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日本人から見るとなんだか訳がわかりませんが、ロシア人が見れば、キエフ・ルーシ(前述のリューリクの摂政であったオレグが現在のキエフに開いた国家)が10世紀に正教を国教化したことだとピンと来るでしょう。

つまり、ロシアは正教国家であると言外に暗示しているわけです。穿った見方をすると、2024年の大統領選挙で超長期政権を狙うプーチンが、最大多数を占めるロシア人(ルースキー)のウケを狙っているのではないか、という見方も成り立ち得ます。

小泉 悠 東京大学先端科学技術研究センター専任講師

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こいずみ ゆう / Yu Koizumi

1982年生まれ。早稲田大学大学院政治学研究科修士課程修了。修士(政治学)。外務省国際情報統括官組織(専門分析員)、ロシア科学アカデミー世界経済国際関係研究所客員研究員、国立国会図書館立法及び考査局非常勤調査員などを経て、現在、東京大学先端科学技術研究センター特任助教。『「帝国」ロシアの地政学―「勢力圏」で読むユーラシア戦略』(東京堂出版)で、2019年サントリー学芸賞受賞。他の著書に『プーチンの国家戦略』(東京堂出版)、『軍事大国ロシア』(作品社)などがある。

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