「ルールを決められると破りたい」ロシア人の本音 あまりに多様なロシア人を束ねるのは難しい

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あるとき、国防大臣が、「わが国の若者は、徴兵年齢になると、どういうわけか具合が悪くなってしまうようだ」と皮肉ったことがあるほどです。 

私の知り合いのロシア人もこの手で徴兵を逃れようと医者を訪れたのですが、ここで意外なことをいわれました。「お前さんは視力が低すぎる。これなら普通に徴兵検査を受けても不合格だよ」というのです。

医者もそんなこといわずに偽診断書を書いておけば儲かったのに……と思わないではないですが、こういうところも実に「ロシアっぽい善意」といえるでしょう。

ロシア人を統治するのは容易ではない

とにかくそういうわけで知り合いは徴兵検査の会場に向かったのですが、視力検査の段になるとこんな考えが頭をもたげたそうです。「結局、視力検査の表はずっとそこに掛けたままなんだから、前のやつがいう『上』とか『右』とかを記憶しておけば通っちゃうんじゃないか」。

もともと非常に賢い男ですから、自分の前に並んでいる人たちがどこを指されたときに何と答えたのかを一瞬で覚え込み、自分の番が回ってきたら見事に合格したそうです。

いや、金を払ってでも軍隊に行きたくなかったのでは……? と突っ込みたくなりますが、無理だといわれると何としても突破してやろうというのがロシア人。実利のためにルールを破ることもありますが、ルールを破ることは時にそれ自体が目的にもなってしまうのです。

そんなロシアの人々を統治するのは容易ではありません。むしろ「われわれは容易に統治できない民なのだ」というところにロシア人は自負心を持っているようなフシもありますし、そもそも建国神話からして「部族同士が争い合ってどうにもならないのでノルマン人のリューリクに頼んで統治してもらった」ということになっています。

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