ノーベル賞で注目「因果推論」登場で起きた大変化 「迷惑メールの振り分け」や「自動翻訳」にも応用

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(写真:asaya / PIXTA)
ノーベル賞受賞につながった「因果推論」や、ビル・ゲイツがビジネスに活用した「ベイズ・テクノロジー」など、データサイエンスの手法はビジネスでも広く活用されています。
『データサイエンティスト入門』(野村総合研究所・データサイエンスラボ著)では、そうした事例を数多く紹介しています。本稿では、同書から一部を抜粋・再構成しお届けします。

ノーベル賞で注目の「因果推論」

ビッグデータの時代が到来し、データサイエンスの様々な理論がビジネスに活用されています。その代表例が「因果推論」です。

因果推論とは、入力データ(インプット)と出力データ(アウトプット)から、その因果関係(原因とそれによって生じる結果との関係)を推定していく考え方です。因果推論を用いた政策効果の測定がノーベル経済学賞を受賞したこともあり、近年注目されている理論です。

統計学では複数のデータの“相関関係”を分析する手法が中心でした。検定や回帰などの手法は、データの関係がどれぐらい強いのかを表す分析手法です。しかし、これらの手法では、“相関”があることはわかりますが、“因果”がわかりません。そのため、因果関係を推計する「因果推論」が注目されるようになりました。

因果推論のビジネス応用の例としては、マーケティング分野への応用があります。広告に接触することで商品(例えばエアコンやアイスなど)の購入率が上がったとしましょう。この場合でも、商品を購入したという「結果」が、広告に接触したという「原因」だけで、すべて説明することはできません。広告に接触したことよりも、店頭で安売りしていたことが影響したかもしれません。因果推論では、実際に広告に接触した人が「もし、接触しなかったら」どうなっていたのかを分析することで、因果関係を推計します。

このように他分野におけるデータサイエンスの理論や、純粋数学の分野における研究成果がビジネスの分野にも活用されるようになりました。また、これらの理論を応用するためのデータ分析ツールも整備されてきました。誰もがデータサイエンティストとして、既存の理論をビジネスに活用できるようになりつつあるのです。

データサイエンスが、ビジネスにつながる、すなわち、企業の収益に直結するようになったことで、データサイエンティストへの注目が高まりました。

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