発達障害の子どもを排除する厳格な「学校ルール」 「普通に成長した子」しかいられない通常学級に

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中学1年、2年はあまり学校に通えなかったのですが、3年生になってから行けるようになりました。彼が遊びに来た時に話を聞くと、「彼女ができた」と言います。彼女と一緒の高校に行くために、勉強をがんばったそうです。

小学校の時は、ずっと動いていて、周りの子に迷惑をかけている子でしたが、随分と落ち着いていました。高校までいけば、通信制や単位制、自由な校風の学校もあって選択肢が増えてきます。

――2013年に成立した「障害者差別解消法」では、同じ場で学ぶために、障害の特性に応じた環境の調整や工夫をする「合理的配慮」が公立学校に義務付けられました。ただ、教師は工夫をしたくても、忙しすぎるという声も聞こえます。

明日の授業、来週の行事につねに追われ、考える余裕がないという現実問題はあります。2000年以降、教師への人事評価制度が入ってからは評価が給料や昇給に跳ね返るので、管理職に物が言いづらくなりました。

東京都では職員会議で挙手での採決を禁止するなど、教員を抑圧する政策がこの20年間ばんばん打ち出されました。そうしているうちに教員自身が主体性を失い、思考停止してしまったところもあります。

ただ、考える時間が取れなかったとしても、担任に「この教室にいていいんだよ」という眼差しがあるだけでも、だいぶ違います。

教師も学校文化との板挟みに

――発達障害の子どもへの投薬についてはどう考えていますか。

「薬を飲んで落ち着けば成功体験ができ、子どもの自信になる」というのが、多くの教師の考え方だと思います。ただ、薬を飲んで成功する体験を積み重ねているだけなので、薬が手放せなくなりますよね。

クラスを受け持った時点で、大量に服薬している子もいます。薬を飲んでいる子どもの中には、たとえ調子が良い日でも「今日俺は薬飲んでないからどうせだめなんだ」「今日薬飲んでないから暴れるよ」と自分から言ってくる子もいます。

薬だけに頼らずに生活できるよう、この子にどういう環境が合っているかを考えることが、私たち教師の仕事だと思っています。

合理的配慮をしようと努力している教師もいますが、(さまざまなルールを設ける)学校文化が変わらない限り、それとの板挟みになります。その結果、環境の調整よりも投薬が優先される可能性もあります。集団行動が苦手な子がいたら、そもそも「なぜそのルールが必要なのか」を子どもにも考えてもらい、学校の文化そのものを見直していく必要があります。

【情報提供のお願い】東洋経済では、発達障害に関連する課題を継続的に取り上げています。こちらのフォームへ、情報提供をお待ちしております。
井艸 恵美 東洋経済 記者

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いぐさ えみ / Emi Igusa

群馬県生まれ。上智大学大学院文学研究科修了。実用ムック編集などを経て、2018年に東洋経済新報社入社。『週刊東洋経済』編集部を経て2020年から調査報道部記者。

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