担任の工夫や周りの子への理解を促すことで通常学級にいられる子が、特別支援学級に追いやられる事例も多く見てきました。その結果、通常学級は「普通に成長した子ども」しかいられない教室になりつつあります。
昔の通常学級は、いろいろな子どもが集まる1本の大木でしたが、今はどんどん枝分かれして、幹の部分が細くなっています。
――同じクラスで過ごすことで、周囲とトラブルにならないでしょうか。
一緒に過ごしていれば、喧嘩もするし、嫌なこともある。もちろん、暴力や暴言などで理不尽に嫌な思いをさせてしまった時は厳しく指導し、やられた子へのフォローが欠かせません。
そうして周囲と接する中で、徐々に手をすぐに出さない接し方を学んでいきます。ある程度の年齢になると落ち着くことも多いので、その子の成長を待ってあげることが大切です。
子どもは優しくて、柔軟です。一緒の空間で過ごしていると、「あいつは授業で邪魔ばっかりするけど、忘れ物をした時は貸してくれて優しいんだよね」と、多面的に見るようになります。その子も一人の人間だということが理解できるんです。
しかし、自分の周囲で障害やハンディキャップのある人を知らないで育ち、あるとき突然出会ったら理解できるでしょうか。ともに育たない学校の現状は、社会をますます分断してしまうのではないかと危機感を感じています。
「この子は難しい」という担任の判断から
――特別支援学級に入る子どもは、どのようにして決められるのでしょうか。
担任の判断からです。担任が通常学級では難しいと判断したら、校内の生活指導担当やスクールカウンセラーにつなげます。彼らが教室の様子を見ると、先生が必死に対応してもどうにもならず、ほかの子どもたちからも邪険にされたり、避けられたりしている状況があります。そうすると「この子にとってこの環境はふさわしくない」という話になります。
まずは週に何時間か別の教室で指導を受ける通級指導、それでも改善が見られなければ特別支援学級に転籍するという流れです。転籍を検討する際には、担任教師や管理職、特別支援学級の教師らで判定会議を行います。
判定会議でも担任の判断は重いので、担任が「この子は難しい」と言っていたら、転籍が認められることが多い。もちろん、その前の段階で保護者との対話と納得は必須ですが、保護者は学校からさまざまな角度で説得されると、「前向きに」というより「諦めて」入級を受け入れるパターンも多いです。
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