1.6Lで304馬力「GRカローラ」が背負う重大使命 先発の「GRヤリス」とは似て非なる開発の狙い

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GRカローラの内容を精査すれば、ヤリスからGRヤリスを仕上げた手法やメカニズムをそのままカローラに当てはめたことがわかる。

もちろん、カローラはヤリスよりも1クラス上なので、エンジンのパワーはアップされ、それにあわせてボディやサスペンションまわりの補強も行われている。「モータースポーツ用の車両を市販化する」というコンセプトは、GRヤリスと同じだ。

ただし、GRヤリスとGRカローラの立ち位置は少々異なる。GRヤリスは、WRC(世界ラリー選手権)という世界最高峰のモータースポーツを戦うリアルレーシングカーの「ヤリスWRC」がある。つまりGRヤリスは、言ってしまえばWRCカー直系のレプリカ。WRCファンの受け皿と言える存在だ。あくまでも競技車が先である。

「GRヤリス」のWRCマシン(写真:トヨタ自動車)

一方、カローラには、そうした世界的なモータースポーツの場はない。そのかわり、トヨタのプレスリリースには「今回、『お客様を虜にするカローラを取り戻したい!』とのモリゾウこと社長の豊田の強い思いで、GRカローラの開発が始まりました」との説明がある。

豊田章男社長の言葉が、何を意味するのかわからない人もいるだろう。これは、カローラの歴史を知らなければ理解しづらいはずだ。

若者のクルマか? おじいさんのクルマか?

もともとカローラは「お客様を虜にする」存在であった。しかし、今のカローラは虜にできていない。だから「取り戻したい」と強く思っているのだ。これは、今年や去年ではなく、もう少し大きな時間の流れの中での話となる。

まず、カローラが「お客様を虜にしていた」のがいつかといえば、それは初代が誕生した1966年から8~9代目の時代にあたる2000年代初頭までだろう。この頃のカローラは、とにかく売れていた。年間販売ランキング1位を30年以上も守り続けてきたのだ。

若い人はピンとこないだろうが、カローラには若々しくスポーティなイメージがあった。ところが、ユーザーの高齢化とともにクルマのキャラクターも高齢化。いつしか、若々しかったはずのカローラが「おじさん」どころか「おじいさんのクルマ」になっていた。

2000年に登場した9代目「カローラ」(写真:トヨタ自動車)

販売にも陰りが見え、首位から脱落。2010年代はそこそこ売れていたものの、ベスト3に入ることはできなくなっていた。「格好いい」とか「憧れ」とはほど遠い存在となり、とても「虜にする」ことはできないクルマになっていたのだ。

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