いじめ被害者をユーチューバーが救った「手段」 学校名を公開した動画で教育委員会が動いた

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このいじめに関して計3本の動画が公開されているが、執筆時点で約470万回再生に。その結果、教育委員会は男子生徒と退学した女子生徒のそれぞれをいじめの重大事態と認定、第三者委員会を設置して調査を開始するとしている。それまで10カ月も動かなかった事態が、YouTuberの動画公開によって動いたというわけだ。

一方で、動画を公開することで、相談者当人に不利益はないのか、金儲けや売名のための行為ではないか、加害者へのバッシングにつながらないかなどの懸念が浮かぶ。

それに対して、動画公開後の影響について相談者本人に聞く動画も投稿されている。生徒は、「信用されるようになった、心の持ちようが楽になった。(動画に)温かいコメントが多くて、自分も親も笑うようになった」と喜んでいた。

学校名を公開したことで学校に行きにくくなっていないかという懸念については、「むしろ知ってもらいたかった」と当人。

一方、同じ高校の在学生からの、「同校の生徒が就職できなくなったら責任が取れるのか」という、学校の実名を出したことに対する非難コメントも紹介。これに対して石田さんは、「影響力のあるところでの発信が自分ができることだった」と説明している。さらに、「動画には広告もつけていないし、委任状をもらえなければ動画なしで行動するつもりだった」という。

同時に石田さんは、加害者の特定行為、学校や先生、ほかの学生に対する誹謗中傷、学校内の口コミを荒らす行為などをやめるようにと動画内で呼びかけている。

動画の公開については、意見が分かれるところかもしれない。しかし、少なくとも相談した男子生徒は喜んでおり、事態も多少なりとも改善しているように見える。

「声なき人の声」を広く届ける役割も

近年このようにYouTuberが相談を受け、問題を解決している例も増えている。代表的な例が、YouTuberのコレコレさんだ。コレコレさんの運営する「コレコレチャンネル」のチャンネル登録者数は179万人に上り、視聴者からの相談を生配信で解決するスタイルが人気となっている。

有名なのは、2021年1月に発覚した元YouTuberワタナベマホトの児童ポルノ法違反事件だろう。コレコレさんのライブ配信で、15歳の女子高生がワタナベマホトにわいせつな写真を送るように要求されたことを告白。その結果ワタナベマホトは、UUUM契約解除、引退表明し、児童ポルノ法違反の疑いで逮捕されている。

2021年3月、旭川の女子中学生(14)が性的ないじめを受け、川に飛び込み自殺未遂などをしたがいじめはおさまらず、雪の積もった公園で凍死する事件が起きた。このいじめ事件に関して、ネット上で加害者とされている人物が、やはりコレコレさんの生配信上で「誤解でデマ」と主張したこともある。

コレコレさんのもとには、ネット経由の性被害や金銭トラブルなどの相談が、若者を中心に寄せられるという。友人に言ったらネットに書かれるし、親にも相談できない。相談機関はネットのことがわからないからと、YouTuberのコレコレさんを頼ってくるというわけだ。

あえて生配信する理由は、相談内容を聞いた視聴者の力を借りて問題が解決することがあるためという。しかしそれだけでなく、声なき人の声を拾って届けるという機能も果たしているようだ。

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