ロシア・ルーブルにも負けつつある日本の「円」 「トルコ中銀の独自理論が招くリラ安」に類似も

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他通貨とも比較してみよう。過去1年間に関し、対ドルでの変化率を見ると、やはり円は主要通貨の中で劣後している。2021年通年でも、2022年初来でも円の下落幅は目立って大きい。もちろん、多くの通貨が対ドルで負けているため、為替市場の潮流としてドル高であることは間違いない。しかし同時に、現下の円安を単に「ドル高の裏返し」と割り切ることには無理がある。ルーブルにすら勝てていない以上、やはり今の円安には日本固有の材料が寄与している。

「通貨の信認」毀損の代表格トルコ・リラ

すでに、国会では黒田総裁に「円の信認」の毀損について質す場面が見られているが、「通貨の信認」が毀損しているという事例で真っ先に思い浮かぶのがトルコ・リラである。トルコ・リラといえば、実質的にトルコ中銀(CBT)の政策運営を牛耳るエルドアン大統領が「高金利が高インフレを招く。よって利下げでインフレを抑制できる」という独自の理論を唱え、この思想を中銀に強いていることで知られる。

「高インフレに対し利下げで応戦する」という政策運営は文字どおり火に油を注ぐようなものだが、この独自理論では「通貨を意図的に切り下げることで輸出が焚きつけられ、経常収支が改善、結果的に為替の安定も図られる」ことが想定されているという。常人には理解の難しいロジックである。

周知のとおり、一般的な経済理論からはかけ離れた政策運営は金融市場から支持されず、トルコ・リラは慢性的に下落を重ね、同国の2月消費者物価指数(CPI)は前年比50%を優に超えるなど、独自理論に基づくインフレ抑制策はまったく奏功していない。しかし、この期に及んでも追加利下げの可能性が示唆されるなど、もはや中銀の独立性以前の問題として、いったいどのような理屈で動くのか皆目見当がつかない。

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