意外と誰も答えられない「民主主義」とは何か 混乱する世界でそれでも民主主義が必要な訳

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その一方、思想家や哲学者の言葉というのは、いわば蒸留酒のようなもので、背後にはその時代の社会のあり方や、そこでの人々の経験があることをいつも痛感します。そのような背後の社会こそが、いわば、思想の「身体(ボディ)」だと思ってきました。

民主主義論も同じで、多くの人々が政治に参加し、自分たちの社会の問題を自分たちで解決する多くの経験や活動があってこそ、生まれてきた議論です。そこから私は、民主主義を支える多様な社会的経験に関心を持つようになりました。

テクノロジーが民主主義に与える影響

現代における民主主義を考える上で、ポイントが3つあります。

第1は「デジタル化時代の民主主義」。急激に変化するテクノロジーが民主主義にいかなる影響を与えるのか、という点にあります。

トクヴィルは『アメリカのデモクラシー』で、郵便と印刷術が、いかに人々の平等化につながったかを強調しています。特別な場所や立場になくても、多くの人が容易に知や情報にアクセスできることこそが、民主主義の基礎条件になったというのです。その意味では、現代のデジタル化の進展も、民主主義の新たな可能性を開くのかもしれません。

いわゆる「デジタルトランスフォーメーション(DX)」の話も、単なる技術的変化ではなく、政治や経済、社会のあり方を変えてこそ、意味があります。今日、政府や大企業は多くの個人のデータや情報を利用することができますが、逆に個人も政府や大企業のデータや情報を利用できるのでなければ、バランスが取れません。市民が政府のデータや情報にアクセスし、自ら社会的課題の解決に取り組む「オープンガバナンス」の理念の本質はそこにあります。

第2のポイントは「日常に根差した民主主義」です。私は民主主義とは、選挙に尽きるものとは考えていません。確かに政党や政治家を選ぶ選挙は民主主義の重要な要素です。しかし、それだけが民主主義ではありません。

トクヴィルもまた、首都の議事堂ではなく、地域の無名の市民による自治の活動に、民主主義の原動力を見出しています。人々が自分たちの社会のことを、自分たちの力で解決していく。そのような経験を積み重ねている点に、民主主義の強みがあると論じているのです。

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