ネット配信拡大で変貌する「映像ジャーナリズム」 報道はTVニュースから配信ドキュメンタリーへ

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文化庁芸術祭賞やATP賞テレビグランプリ(全日本テレビ番組製作社連盟)といった数あるアワードを受賞すれば局の宣伝にもなり、制作力を世に示すことができる。こうした背景もあり、ローカルテレビ局によるドキュメンタリーはかねてから数多く制作されてきた。

民放キー局でもドキュメンタリー番組は重視されてきた。フジテレビでは日曜14時からの『ザ・ノンフィクション』を、日本テレビでは同じ日曜深夜に『NNNドキュメント』を放映している。それぞれ1995年10月、1970年1月のスタートという長寿番組で、40〜50代のビジネスマンを中心に根強いファンに支持されている。

原一男監督の『ゆきゆきて、神軍』(1987年)はU-NEXTで配信中だ ©疾走プロダクション

映画では、かねてから社会的メッセージが強い作品が評価されている。日本では、市井の人々の生きざまや人権問題を映した東海テレビ制作の『人生フルーツ』(2017年)や『ヤクザと憲法』(2016年)といったドキュメンタリー映画はロングランヒットになった。アメリカ人の視点で和歌山県太地町のイルカ追い込み漁を捉えた『ザ・コーヴ』(2010年)も撮影や編集手法が社会問題を提起しながらも、世の中的に大きな話題になった。

また、戦争責任を追究する破天荒な人物を追った原一男監督の『ゆきゆきて、神軍』(1987年)など、その時代を当時ならではの手法で切り取った鮮烈な作品もあった。

社会的関心事が話題性を喚起

こうした良質な作品ラインナップが以前より揃っていたが、大きく変わったのが「アウトプット」だ。これまでは先述の通り、テレビ局の深夜の番組内や、ニュース番組の特集枠、また映画館で公開するのが一般的だった。しかし、動画配信サービスの登場と拡大で、状況は一変する。

まず、放送枠という作品数の制限がなく編成されるようになったことでドキュメンタリー作品を扱える環境が整った。さらに、動画配信サービスの差別化が求められる中、ドキュメンタリーの存在が重視される。海外放送局や独立系プロダクションの良質な作品をこぞって取り揃えるようになり、NetflixやAmazonプライムといったグローバルプラットフォームも、目玉企画としてオリジナルのドキュメンタリー作品を制作するようになった。

マイケル・ジョーダンの隆盛期を映像で振り返る『マイケル・ジョーダン: ラストダンス』。Netflixシリーズ独占配信中だ (Netflix提供)

作品の需要が増えたことで、社会問題や政治、歴史、自然科学といった男性ビジネスマン向けのテーマだけではなく、女性層や若い世代に関心を持たれるファッションやグルメといったライフスタイルに近い題材の作品が増えた。そこには、スポーツ選手や著名人のスキャンダルといった一般層の興味をひく時事ニュースや芸能トピック的な作品も含まれる。

元妻とその友人男性の殺人容疑で逮捕されたアメリカンフットボールの元スター選手であり俳優のO・J・シンプソンを追う『アメリカン・クライム・ストーリー』(2016年)はその火付け役に。近年では、ロシアの国家ぐるみのドーピングに迫り「第90回米アカデミー賞」を受賞したNetflixオリジナル『イカロス』(2017年)や、『マイケル・ジョーダン:ラストダンス』(2020年)、U-NEXTで配信中の『カルロス・ゴーン 最後のフライト』『Qアノンの正体 / Q: INTO THE STORM』(2021年)など、社会性かつ大衆性を併せ持つテーマの作品が増えている。

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